一般社団法人 日本自動車販売協会連合会(自販連)が発表している販売台数ランキングで、日産「キックス」が伸び悩んでいる。
登場月となる2020年6月は1836台で27位だったが、7月は50位以下でランク外、8月は1178台で38位と、日産の意気込みと販売が一致していない。
輸入車で、さらにコロナ禍で思うように生産が進んでいないのかもしれないが、日産にとっては大誤算ともいえる状況なのではないだろうか。なにより、受注は好調だったのにもかかわらず台数が入ってこないというのは、ディーラーとしてもほかのメーカーに新規顧客を奪われる可能性があり死活問題なのではないだろうか。
現在の納期状況と、ディーラーに寄せられる声、この状況をディーラーマンはどう捉えているのか? について現場を取材した。
文/遠藤徹
写真/編集部、SUBARU
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■海外生産などの複数要因が重なって発生した納期遅れ
日産が2020年6月24日に発表、同月30日に発売開始した新型コンパクトSUV「キックス」の納車遅れが話題になっている。9月下旬現在までで推定1万5000台以上と好調な受注累計になっているが、実際の販売実績にあたる登録台数は月間1000台そこそこにとどまっているのである。
9月22日現在の納期は、モノトーンで2021年1月上旬、2トーンは2月と4カ月以上の待ちとなっている。
要因はいろいろある。組み立てているのがタイの生産工場であるから、船積みしてから海上輸送するまでの時間がかかる、コロナ禍でサプライヤーからの部品供給が遅れ、スムーズな供給ができない、現地との連絡がスムーズに行かず、装備品やボディカラーとのマッチングがうまくいっていない、などである。
今回はパワーユニットの「e-POWER」については日本から送り現地で組み付けている。バックオーダーが多数になれば、こちらの輸出態勢にも支障が生じることになる。
ラインオフし船積みし、海上輸送する訳だが、タイからは約1カ月かかる。天候が悪ければ改善するまで待つケースも発生するはずである。往復するたびに積載物資の輸送効率をよくするために、ほかの荷物を行き帰りに積載するので、それにタイミングを合わせる作業も余計に手間がかかることになる。
国内工場で生産すれば、バックオーダーなしなら1カ月以内にユーザーのもとに届けられるのが一般的である。キックスの場合は、国内に持ち込んでから関税手続きや完成検査を受けるので、これもプラスの手間になる。
最初からタイではなく国内で生産すれば、こうした問題は生じなかったはずである。キックスは以前からタイで生産し、現地での販売や輸出をスタートさせていたので、効率がよかったといった事情があるようだ。為替レートが円高で、勝つ人件費が安いので現地の方が低コストで生産できるといったことも勘案しているようだ。
コロナ禍の影響でサプライヤーからのパーツがスムーズに供給されないようになったのは、日産にとっては不幸であった。当初は5月中旬の発表、発売を予定していたようだが、これが1カ月あまり遅れたのもコロナ禍が足かせになったと見られている。
今後はどうするか。「多少時間をかけて供給態勢の改善を検討するが、コロナ禍があるので年内いっぱいはこの状態が続かざるを得ないかも知れない」(首都圏日産店営業担当者)とコメントする。
問題はライバル他社の動きである。トヨタは8月31日に新型コンパクトSUV「ヤリスクロス」を発表、9月1日から発売開始した。スバルは9月17日に「XV」を改良、マツダは「新型MX-30」を10月中にも発売、ホンダも2021年早々にも「ヴェゼル」をフルモデルチェンジする方向で開発を進めている。
キックスの納期があまり先延ばしになるようだと、キャンセルし、これらライバルの新型車に鞍替えするユーザーが出てくる可能性もありそうだ。
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