ダイハツ・ロッキーのOEMとして登場し、いま大人気のトヨタ・ライズ。2020年上半期の自販連乗用車ブランド通称名別順位で、ライズは58,492台(上半期第1位)を売り上げており、17,455台のロッキー(21位)に3倍近い差をつけている。
ライズが好調に売れる中、トヨタの販売現場は、OEM販売に対し何を思うのか。その思いを取材した。
文:佐々木 亘
写真:TOYOTA、DAIHATSU、NISSAN
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ダイハツOEMで盤石となったトヨタラインナップ
ヤリスクロスが販売され、トヨタのコンパクトカーラインナップ、SUVラインナップは、さらに強化された。この盤石の体制の一端を支えるのが、ダイハツからOEM供給されるクルマたちだ。
大ヒット中のコンパクトSUV・ライズ、そしてコンパクトカー・ルーミー、どちらも完成度は高い。ヤリスとライズ・ルーミーを比べた際に、操作系統の違いこそあれ、音や質感などの差異は僅かだ。軽自動車だけでなく、コンパクトカーでもダイハツの技術力は高い。
ダイハツがトヨタの完全子会社となり4年余りが経過する。親子の関係性から生み出される「良品廉価」なクルマ達は、ダイハツの商品企画力を、トヨタの技術力が後押しした形だ。メーカー同士の親子関係から生み出されるOEMを、販売現場はどう受け止めているのだろうか。
販売は好調、ライズは大歓迎、でも戸惑いの色も
販売現場で話を聞くと、ライズやルーミーに対する評価は上々だ。これまでもダイハツOEMの取り扱い経験が豊富なネッツ店、カローラ店では、ライズの完成度の高さと売れ行きを絶賛している。OEMに対する違和感もなく、順調に販売している印象だ。
OEM車を取り扱う経験の少なかったトヨタ店・トヨペット店でも、ライズの売れ行きは大歓迎されていた。ただし、順調に販売を進める中で、顧客からは「ライズにはトヨタセーフティセンスは付いていないの?」 「スマートアシストとトヨタセーフティセンスは何が違うの?」といった声が出ることもあるという。
こういった質問には丁寧に説明すれば、理解を得られるというが、一部、トヨタの販売現場では、ダイハツのOEM車を気構えて販売する姿が垣間見えた。
ざっくり言うと、トヨタとダイハツの距離がさらに近づき、主にトヨタ側がもっと熱心に(純正トヨタ車と同じくらい)ライズを売り込めば、ライズは今よりもさらに販売を伸ばすポテンシャルがある、と感じている。
OEMを上手く取り扱う日産と三菱
OEM車を取り扱う中で、OEM元と受け手、そして販売現場の意思疎通は必要不可欠である。その中で、上手にOEMの仕組みを構築し、前向きに取り組んでいる印象があるのが、日産と三菱だ。
両社の間には株式会社NMKVという合弁会社があり、三菱のeKシリーズと日産のデイズ・ルークス等では、NMKVを通じて、両者の意見がしっかりと入り込み、商品企画が行われている。どちらかが主体ではなく、横の関係で双方が歩み寄るスタイルだ。
ルークスに搭載される安全装備の総称は日産インテリジェントモビリティ、eKスペースでは三菱e-Assistと、それぞれのメーカーで従来使われてきた名称を、そのまま使用している。日産のプロパイロットは、三菱ではマイパイロットと呼び変える。
こういった細かな取り組みが、販売現場やユーザーからの疑問を少なくし、販売しやすいクルマへと変えていく。OEMを製造販売していく上での、見本となるカタチがここにある、と、筆者は感じた。
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