毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ マークIIブリット(2002-2007)をご紹介します。
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文/伊達軍曹、写真/TOYOTA
■トヨタ ステーションワゴンの系譜を受け継ぎ登場した最後の「マークII」
「車名はマークIIだが中身はまったくの別物」だった“前任者”と違い、本当にX110系トヨタ マークIIをベースに作られた車。
しかし「美しい」とは言い難かったデザインと、ステーションワゴンブームそのものの終焉により、あえなく1代限りで消えていったトヨタのステーションワゴン。それが、トヨタ マークIIブリットです。
マークIIブリットの前身にあたる「トヨタ マークIIクオリス」は、マークIIを名乗ってはいましたが、FRセダンであるトヨタ マークIIとはメカニズム上の共通点はないFFレイアウトのステーションワゴンでした。
マークIIクオリスは、1990年代に巻き起こったRVブームとステーションワゴンブームに乗り遅れまいと、北米で販売されていたFFのカムリワゴンを化粧直しし、とりあえず「マークIIクオリス」という車名を付けて日本市場に投入されたステーションワゴン。
それに対して2002年1月に発売となったこちらマークIIブリットは、正真正銘マークIIがベースです。
「高級FRツーリングワゴン」と銘打たれたマークIIブリットは、トヨタいわく「走りの魅力と日常の使い勝手を両立した」とされるFRレイアウトのステーションワゴン。
2WD車のボディサイズは全長4775mm×全幅1760mm×全高1470mm。ベースとなったX110系マークIIセダンと較べて全長が40mm長く、全高は5mm低いという、当時のプレスリリースによれば「走りを予感させるスタイル」を採用しています。
また独立4灯ヘッドライトを採用してセダンとは異なる顔つきとしたことも、マークIIブリットの特徴でした。
パワーユニットはマークIIセダン同様すべて直列6気筒で、2L(最高出力160ps)/2.5L(同196ps)/2.5L直噴(同200ps)/2.5Lターボ(同280ps)の4種類をラインナップ。
組み合わされるトランスミッションは、ターボ車は5速ATですが、その他は4速ATでした。駆動方式は基本的にはFRですが、2Lと2.5Lには4WDも用意。
4WDシステムは、前後の駆動力を30:70から50:50まで路面状況に応じて電子制御する「i-Four」が採用されました。
サスペンションもマークIIセダンと同じ4輪ダブルウィッシュボーンですが、マークIIブリットのリアサスペンションには、走行中や荷物積載時などに一定の車高をキープする「セルフレベリング機能」を備えたダンパーを、一部のグレードを除いて装着。
またターボ車には、車速に応じてステアリングの重さを自動調節する「プログレッシブパワーステアリング」も採用されています。
このように「高級かつスポーティなステーションワゴン」といった路線を狙ったマークIIブリッドでしたが、販売はまったくふるいませんでした。
2004年11月にセダンのほうのマークIIが「マークX」へとフルモデルチェンジされると、伝統の「マークII」の名を受け継ぐのはこのブリットだけとなったのですが、だからといって販売状況が好転することはなく、マークIIブリットは2007年5月には生産終了に。
そしてそのまま同年6月には、販売のほうも終了となりました。
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