バランスの良さはコンパクトカーNo.1ながら思ったより販売は伸びていない? ホンダの旗艦、新型フィットの販売が「もう一歩」な理由とは?
2020年2月、ホンダの人気コンパクトカー「新型フィット」が登場。通算4代目となる同車は、ハイブリッドを一新し、室内の広さも抜群。クロスオーバーSUVモデルの「クロスター」も新しくラインナップに加わり、盤石に見えた。
しかし、蓋を開けてみれば、ほぼ同時発売となったトヨタ ヤリスが2020年の登録車販売年間No.1に輝いたいっぽう、フィットは同4位と、期待値の高さからすれば伸び悩んだ感もある。販売力の差はあれど、かつて初代フィットがカローラを破って販売No.1に輝いたことから考えれば、もっと売れても良いはずだ。
なぜ新型フィットは期待に対してやや伸び悩むのか? 自動車評論家の国沢光宏氏が解説する。
文/国沢光宏 写真/HONDA、編集部
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2020年販売ではライバルのヤリスに軍配
新型フィットの売れ行きが伸び悩んでいる。2020年の販売状況をみると、発売直後の3月と4月は登録車2位になったものの、5月3位。6月に4位。7月5位となり直近だと7~8位が定位置になってしまっている。(編注:直近の2020年12月販売台数は、ヤリス/1万7198台=1位、フィット/6726台=同7位)
絶対的な販売台数もフルモデルチェンジをしたのに伸びていない。本来なら1年くらい新車効果で販売増になることを考えれば厳しい。
一方、先代モデルではフィットの70%くらいしか売れていなかったヤリスが大躍進。2020年のベストセラーカーになった。絶対的な販売台数も2016年と比べ2倍以上だから驚く。なぜフィットは伸び悩み、ヤリスが売れているのか?
なぜ新型フィットは伸び悩んでいるのか?
結論から書けば「カッコが悪いから」と「華がないから」ということになるんだと思う。
まずデザイン。爆発的な売れ行きとなった初代フィットは、誰が見ても「バランスよくオシャレで清潔感ありますね」と思ったことだろう。
写真を見るとさすがに古さを感じるものの、少し手直ししするだけで充分通用しそう。初代を踏襲した2代目フィットも少しエッジを加え、フィットらしさを持ちながら、新しさを演出している。
3代目はハイブリッド関係のリコールを連発して売れ行きにブレーキが掛かったものの、デザインの方向性でフィットらしかったし、前後のバランスも良かったと思う。
5回も6回もハイブリッドのリコールを出さなければ、けっこう売れたんじゃなかろうか。売れ行きの足を引っ張ったの、ハイブリッドの出来の悪さに起因するイメージの悪さです。
という流れで現行モデルを見ると、デザインがガラリと変わった。フロントグリル開口面積小さくなったので車格感はガックリ落ちてしまう。Cピラーの形状なんか過去日本で一度も成功していない“後ろの方がボッテリしてる”ライン。
しかもボディ前半と後半で違うデザイナーの担当じゃないかと思えるくらい違う雰囲気を持つ。
このクラスだと本来なら売れ筋になるだろう「クロスター」も中途半端。最低地上高を見たって4WD同士で比べたら標準モデル150mmでクロスター155mm。背を高くするならハッキリ解るくらいやらないと埋もれてしまう。
タイヤサイズを大きくしたり、バンパーまで作り替えしているのに、クロスターの存在感はほとんど出せなかった。
開発チームもデザインの地味さを認識していたと思うけれど、そいつをカバーするハード面の”華”を付け足さなかった。
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