電動化の加速で、冬場の車内の寒さも加速する!? 電動車のヒーターに課題。現状と解決法は?
今年の冬は日本海側を中心に降雪が多く、高速道路での長時間に及ぶ立ち往生などが報道され、また電力会社からの節電要請などもあって、電気自動車(EV)を愛車とすることを不安視する空気も漂った。
これ以上の気候変動を抑制するためにクルマの電動化は待ったなしの状況となってきたが、寒冷地の過疎地ではEVを利用するには不安要素がまだまだ多いのは事実。
それは暖房を使うと電費が著しく低下するからだ。
急速充電器が少ない地域では1日に充電できる機会が限られるために、どうしても航続可能距離を気にしながらの走行になってしまう。この電気自動車における冬場のヒーター問題に対処法はあるのか?
文/高根英幸 写真/NISSAN、HONDA、Adobe stock
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EVなどの電動車は暖房が弱点
純エンジン車やマイルドハイブリッド車は、暖房の熱源にエンジンの冷却水を利用している。エンジンは、この30年ほどの間に、燃料のエネルギーを駆動力として取り出せる熱効率を3割近くも高めてきた(約3割前後から4割へと向上)。
しかしながら、まだ3割近くの熱エネルギーは、冷却することで捨てているのである。暖房は、この捨てている熱エネルギーを利用しているもので、エアコンによる暖房は、まず除湿をエアコンがおこなない、その後冷却水利用のヒーターが空気を暖める仕組みとなっている。
ハイブリッド車はエンジンがあるぶん、冷却水利用による暖房を確保しやすいが、暖房のためにアイドリングしているようでは、折角の省燃費性能がかなり足を引っ張られるので、やはり暖房は弱点と言えるだろう。
しかも冷間時にはエンジンや変速機を早く暖めることが燃費節約になるため、冷却水の熱でATF(オートマチックフルード)を暖める、排気ガスの熱で冷却水を暖めるなどの工夫も施されており(純エンジン車も同様だ)、エンジンの熱が始動直後は取り合いになるほど、利用されまくっているのである。
一方のEVは、電力の9割前後を駆動力に変換しており、かなり効率が高い。そのため熱として捨てているエネルギーは少ないのだ。
それでもモーターや、電力を制御するインバーター、バッテリーは発熱するため、冷却系が備えられているが、暖房に使えるほどの熱量にはならない(そこまで熱くなったら電子部品は大変!)。これはEVモードで走行できるプラグインハイブリッド車も同様である。
そのため暖房には別の熱源を用意している。具体的には電気抵抗の大きな素材に電流を流して、電気を熱に換える「PTCヒーター」が使われるのが一般的。
それと日産の現行のリーフや三菱のアウトランダーPHEVには、PTCヒーターに加えてヒートポンプ式エアコンが採用されている。
これは家庭用エアコンや業務用エアコンで使われるもので、暖房時にはポンプで冷媒を圧縮して温度を高め、それで室内の空気を暖めてから、圧力を下げると元の温度より冷媒の温度が下がる。
それを外気で暖めてからまたポンプで加圧して温度を高めることを繰り返すのだ(冷房の場合は逆方向に運転する)。
PTCヒーターと比べると消費電力は小さく、効率的ではあるが一気に温度を上昇させるのは苦手で、外気温が極端に寒いと機能しにくいという問題もある(だから日産や三菱はPTCヒーターと組み合せている)。
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