2020年11月5日に発売したビッグマイナーチェンジ版のレクサスIS。2013年に発売され、登場7年目にして、大がかりなビッグマイナーチェンジを果たしている。
一見、フルモデルチェンジかと思われるほど大胆にエクステリアのデザインを変更し、ボディサイズの拡大、レクサスセーフティーセンス+に進化するなど、先代モデルに比べどれほどの進化を果たしたのか?
最も気になるのは欧州車のライバル、特にベンチマークとされるBMW3シリーズを超えたのか? モータージャーナリストの松田秀士氏が解説する。
文/松田秀士、写真/ベストカー編集部、トヨタ、メルセデス・ベンツ、BMW
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■レクサスISはどこまで進化したのか?
2020年11月5日にビッグマイナーチェンジが行われたレクサスISに試乗した。試乗したのはIS300、IS350、IS300h。300と350はFスポーツ(350はFスポーツのみの設定になった)。
まずボクが一番感動したのはIS350Fスポーツ。試乗会の拠点、FSW(富士スピードウェイ)内のレクサスカレッジを後にして、東ゲートを左折。そのまま明神峠に向かった。
山中湖に向かう頂上まではきつい登り坂。そこでUターンして引き返せばきつい下り坂。きついのは勾配だけではない、コーナーも、路面のアンギュレーションもサーフェースもおそらくこんな過酷な峠道はほかにないだろう。
登り始めは民家もあるので非常に低速での走行。まずそこで感じたのがロードノイズを含めて室内静粛性がとても高いこと。乗り込んでドアを閉めた時から密閉性の高さからか、耳障りないわゆるノイズを感じない。
さらに路面からの突き上げ感がなく、とても乗り心地が良い。Fスポーツにはダンパーの減衰力を自動制御するNAVI・AI-AVSが装備されている。
この乗り心地は微小域レベルから減衰コントロールする可変ダンパーによるものなのか? それともシート? スポーツシートだからそれなりにしっかりしているので、サスペンションやボディのマッチングが良いのだろう。
アクセルを踏み込んでみると、3.5L、V6の自然吸気エンジンは急坂でもスムーズにそして力強い。ターボじゃないところがまたいい。レスポンスの心地よさ、速度が上がっても足のこなしはとても優秀で強めのアンギュレーション(路面)でもボディが煽られることもない。
フラットライドなのだ。ターンに切り込む時の応答もとても素直。フロントの重さを気にすることなく、応答から、切り足しの反応も分かりやすくスムーズだ。
サスペンションのレート(スプリング&スタビライザー)が硬すぎないからブレーキングやステアリングの切りはじめにスムーズにロールするため、フロントセクションの剛性アップによる過敏さを帳消しにしている。
硬ければ瞬間移動的に向きを変えるだろうが、それでは切り足しの反応が落ちてしまう。ちょうどいいレベルだ。
初期ストロークがとてもスムーズで、19インチでタイヤサイズもアップされている(350 Fスポーツは前235/40R19、後265/35R19という前後異径)タイヤのグリップ面の変形をコントロールするダンパーの減衰も非常にマッチしている。
バンプストッピングラバーの材質を変更したとのことだが、これもバンプタッチを感じさせずロールを抑えている。
このバンプタッチの印象は旧型と大きく変わっている。コーナー外輪サス・ダンパーがバンプラバーにタッチすると、そこでバンプ側のロールが一気に制御され、そこからはイン側サスの伸び上がりが顕著に感じられるようになるのだ。
このためロール感がドライバーを悩ます原因になる。また外輪(タイヤ)の面圧も急激に上がり、ステアリング切り足しなどの反応も鈍る。つまり、ハンドリングの浅さを露呈するのだ。
何を改良したのかというと、バンプストッピングラバーの材質変更とタッチした瞬間の潰れ方をコントロールしたのだという。これによって実はロールしているのだけれども、ロールを感じにくくなるそうだ。
確かにロールそのものが減ったように感じた。ただし、スプリングやスタビライザーのレートは上がっていないと感じたので不思議に思っていたのだ。
トヨタの新しい下山のテストコースでじっくり煮詰めたと聞くが、早くもテストコースの恩恵がISに現われていると感じた。頂上付近でUターンしての下り。ここの下りは勾配が急なこともあり、相当の覚悟が必要。それだけに登りで感じた手応えがホンモノなのか判明する。
以前のIS350ではちょっと苦手で粗が露出していた。下りながらのハードブレーキングからのS字の切り返しは嫌がる。右→左コーナーへの体勢が出来上がるのに遅れがあった。
ドライバーがステアリング操作で合わせてやらなくてはならなかったのだ。しかし、それが、はっきり変わっていた。俊敏である。無理やりステアリングアクションを起こしてもついてくるのだ。
そしてなんといってもブレーキが良い。下りで思いっきりフロントにストレスがかかっているから、ボディ剛性のマネージメントが大きく進化したのだろう。
そこにダストを約3割低減したアドヴィックスのブレーキのコントロール性の良さがプラスされた。ブレーキ、ペダルタッチから踏み込み、そしてリリース。このコントロール性が良く、ストロークも最小で剛性もある。ただ下りでは最後にフェード気味になった。
しかし、ここは激しいから当たり前か。その時に気になったのは摩擦音が大きくなったこと。
何がこのような進化をもたらしたのか? まずホイールの締結方式が変更された。これまではよくあるタイプで、ハブ側からスタットボルトが出ていてそこにホイールを抱え込むようにセットし、ハブナットを回して固定、締め付けていた。
これをハブ側にねじ溝が切ってあり、そこにハブボルトを差し込んでホイールごと締結する方式に変更したのだ。この方式だとハブボルトだけですみナットがないぶん軽量化になる。
これまでのハブナット式の場合ボルト径が12mmだった。これがハブボルト式に変更し14mmに拡大された。さらに締め付けトルクも103Nm→140Nmへとアップされ、締結力が強くなったのだ。
つまりハブ剛性がアップする。締結部は1輪あたり5本あるのだからばかにならない。バネ下で回転部分だからちょっとした軽量化はジャイロ効果の低減につながる。しかもボルトは頭の部分がナットよりも細いので、ホイールのボルト穴径を小さくできる。
これによってバルト穴が中心に寄るように見えホイールのスポーク部が長くなり、デザイン性も上がったのだ。
もちろんこれだけではない。フロントサイドメンバー周りにスポット打点55点の追加や構造の見直し、構造用接着剤、レーザ-スクリューウェルディングなどボディ全体を見直したことも大きい。
同じことがIS300 Fスポーツにもいえ、ターボゆえのアクセルレスポンスによるトルクフィールの違い、さらに少し軽い身のこなし、といった違いこそあれ本質はほとんど変わらない。
ここでハイブリッドに触れると、進化はしているがFスポーツほどのことはないと感じ、ハイブリッドはまだまだやるべきことはあるのではないだろうか。いずれにしろ7年前のプラットフォームに手を加え続けて、ここまで熟成できるのだから基本設計の技術力の高さも評価できる。
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