今年2021年はかつてアメリカにあった自動車メーカーであるデロリアンモーターカンパニー(DMC)が唯一リリースし、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場したタイムマシーンのベースカーとして使われた『デロリアン(正式な車名はDMC-12)』が登場してから40年の節目である。
という背景もあり少々旧聞となるが、2021年1月21日にVW『ゴルフ』やフィアット『パンダ』、日本車ではいすゞ『ピアッツァ』や日産『マーチ』、トヨタ『アリスト』のそれぞれ初代モデルなどのデザインを手掛けたイタリアの名デザイナーであるジョルジェット・ジウジアーロ氏が設立したデザイン会社の「イタルデザイン」が、同社がデザインした『DMC-12』の40周年を祝うとともに、「VISION BEYOND TIME」というDMC-12の復活を示唆するプロジェクトの立ち上げを公式ツイッターに投稿した。
当記事ではかつてのDMC-12を振り返るとともに、VISION BEYOND TIMEプロジェクトで復活の可能性が出てきた現代版DMC-12の姿を予想してみた。
文/永田恵一
写真/Italdesign
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■DMC-12とはどんなクルマだったのか?
DMC-12の前にDMCは、GMでポンティアックやシボレーを率い、副社長も務めたジョン・デロリアン氏がGMを退職し、自分の理想とするクルマを造るために1975年に設立した自動車メーカーである。
1981年に登場したDMC-12は未来的なガルウィングドアを持つ、全長4267×全幅1988×全高1140mmというボディサイズとなる2人乗りのスペシャリティカーで、開発はデザインをイタルデザイン、メカニカルな部分はロータスカーズ、生産はDMC社がアイルランドに立ち上げた工場で行うというものだった。
DMC-12の成り立ちはロータスカーズによるエンジンをリアに積むバックボーンフレーム+FRP製ボディ、ボディパネルをステンレスとし、パワートレーンはプジョー、ルノー、ボルボの3社により共同開発されPRVと呼ばれた2.8リッターV6エンジンに5速MTと3速ATを組み合わせるというものだった。
DMC-12のステンレスを使ったボディは塗装されず、加工の際にサンドペーパーで付いたキズをそのままにするヘアライン仕上げとした点も特徴で、インテリアはエクステリアに比べると比較的オーソドックスな仕上がりだった。またリアエンジンだけにフロントのボンネット部分に加えシート後方にも相当な荷物が積めるラゲッジスペースが確保されていた。
DMC-12には純金パネル仕様が追加され、ターボ車や4人乗りの4枚ガルウィングドア仕様といったバリエーションも計画された。しかしDMC社はアイルランド工場立ち上げの条件だったイギリス政府からの補助金交付の停止や、ジョン・デロリアン氏のコカイン所持による逮捕(最終的には無罪だった)、さらにDMC-12自体の販売も伸び悩むなど歯車がうまく噛み合わず、資金繰りのショートにより倒産。工場も閉鎖され、DMC-12の生産も1982年12月24日分が最後となった。
ちなみに映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の公開は1985年だったため、DMC-12が再び注目されたのはDMC社の倒産とDMC-12の生産終了からかなりあとというのも皮肉なものである。
なおDMC-12はファンが多いクルマということもあり、DMC社が倒産した現在も多くのパーツの供給が続いており、日本にもDMCジャパンという専門ショップがある。またDMC-12はEV化などによる復活が何度か計画されたが、今のところ実現してない。
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