筆者が初めて購入したクルマは、軽自動車のホンダ Z(1973年製)。2気筒360㏄36psというオートバイのようなエンジンに、ヒューランドパターン(左手前が1速)の5速MTをドッキングさせた「GSS」というグレードだった。
エンジンはトップエンド9000rpm。パワーはないけれど、この5速MTを頻繁にシフトして高回転域を維持することで、それなりによく走ったものです。
Z「GSS」は、サスペンションもかなり硬く、タイヤをセミレーシング(ダンロップG5)に交換してもそのまま問題なくコーナーを攻められた。足かけ4年は乗ったと思います。
筆者はこのクルマのおかげでシフトワークを覚え、ヒール&トゥもダブルクラッチも習得した。このクルマはFFでしたがそれなりにタックインもした。
で、周りの仲間に目を向ければカローラレビン(TE27)やスターレット、サニーGX5(B110)やフロンテクーペなど、まぁレビンやGX5はそれなりに高かったけれどリーズナブルでコスパに優れたモデルがたくさんあったのです。こういったクルマで当時の若者はドライビング技術を磨いていました。
そこで、今の時代にあの頃のようなコスパに優れた若者の手が届く運転訓練機と呼べる国産車はあるのか?ということについて触れてみようと。勝手に5台選んでみた。
ここではこれまでのようにハンドリングなどの評価をするのではなく、そのクルマに乗ってナニを学べるのか? について記します。
ただし、選考基準は「操舵特性が素直で運転を学ぶのにピッタリであること」、「コストパフォーマンスに優れ、若者にも手が届く価格であること」の2点だ。
文/松田秀士 写真/SUBARU、TOYOTA、NISSAN、編集部
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マツダ ロードスター
サスペンションの動きを感じ取り、そしてその動きをコントロールする技を習得するのにピッタリのモデル。ロードスターは走りに徹したモデルなんだね。
理由は前後ダブルウィッシュボーン式サスペンション。リアはマルチリンク式だが、これはダブルウィッシュボーン式の進化系なので同じ。
Wウィッシュボーン式は応力への剛性もさることながら、ロール軸の動きを前後でデザインすることができる。つまりコーナリングでのロール速度が予測しやすい。
さらに、ステアリング・タイロッドが前引きなのでフロントタイヤのトー変化が安定方向に変化する。他にもエンジン縦置きなので前後重量バランスが良い。
MTならばトランスミッションにダイレクトな位置からシフトノブが生えていて、肩関節を固めながらも肘、手首、指を柔軟に動かしての正確なシフトワークを学べる。
ま、とにかく走りを学ぶには全てにおいて打ってつけの素材。是非このクルマに乗ってマスターしてほしいのは、最初にも述べたサスペンションの動き。
ブレーキング時のノーズダイブは前後のピッチセンターが最適化されているから、そのストローク量を正確に感じ取れる。ブレーキの踏力で変えられるでしょ。
コーナーでステアリングを切り込むとフロントがロールし、次いでリアがロールする。ステアリングを切り込む速度でその伝播(フロント→リヤ)速度をコントロールできる。
そして、ロールとは外輪側サスペンションがバンプするだけではなく、内輪側サスペンションがリバンプ(伸び上がる)することであることを感じ取れるようにする。とにかくロードスターには運転上達のすべてが詰まってます。
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