売れているのにあまり目立たない地味なクルマってありますよね。こうしたクルマって、自動車メディアから見ると、地味すぎてなかなか取り挙げにくいんです(すみません!)
とはいえ、ユーザーからは支持を受けているんだから、やはり取り挙げるべきではないか!
ということで今回、自動車メディアが華々しく取り挙げないクルマと題して、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説します。
文/渡辺陽一郎、写真/トヨタ ホンダ ダイハツ ベストカー編集部
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■トヨタ ルーミー/売れてるヤリスに次ぐ影の人気車!
■トヨタ ルーミー:2021年1~2月の平均登録台数/1万1447台
好調に売れ行きのいいクルマは、どれも優れた商品です。多くのユーザーに選ばれ、使われている実績があるためです。良いクルマであれば、自動車関連の媒体(ウェブサイトや雑誌)も積極的に取り上げると考えられますが、実際にはあまり掲載されない車種もあります。
その理由は「自動車媒体を読んでくださるのは、クルマ好きのユーザーが多い」と考えられているからです。この考え方は間違っていないと思いますが、好調に販売されながら取り挙げない車種があるのも不自然です。そこで「自動車媒体が取り上げない人気車」を見ていきましょう。
その筆頭はトヨタルーミーです。2021年1~2月の平均登録台数は1万1447台に達しました。日本自動車販売協会連合会のデータによると、ルーミーの売れ行きは小型/普通車ではヤリスに次ぐ2位ですが、実質的には1位です。
前述のヤリスのデータは、ヤリス+GRヤリス+ヤリスクロスの合計で、個別に算出すると、2021年の1か月平均はヤリスが9065台、SUVのヤリスクロスは9420台になるためです。いずれも1万台には達しません。
ちなみに自動車媒体が頻繁に取り挙げるメルセデス・ベンツ Cクラスの登録台数は、2020年の1か月平均が557台でした。ルーミーはその20倍売れているので、「もう少し取り挙げてよ、ファミリーカーとして人気なんだから」というルーミーの声が聞こえてきそうです。
以前はルーミーの姉妹車として、トヨタ タンクもありました。それが2020年5月からはトヨタの全店が全車を扱う販売体制に変わり、姉妹車も不要になって、タンクは2020年9月のマイナーチェンジで廃止されました。その結果、ルーミーに需要が集中して、登録台数が伸びた経緯もあります。
このような事情があるとはいえ、2021年1~2月の月販平均が1万台を超えたのは大したものです。ルーミーが好調に売れる商品力の秘訣を考えてみましょう。
ルーミーのボディサイズ(標準グレード)は、全長が3700mm、全幅は1670mmとコンパクトです。最小回転半径も軽自動車と同等の4.6mに収まり、混雑した街中や狭い裏道でも運転しやすいです。
その一方で全高は1735mmと高く、車内は広いです。前後席ともに頭上と足元の空間に余裕があり、後席側のドアはスライド式なので乗降性も優れています。
後席を畳むと広い荷室になって自転車も積めます。路面から荷室床面までの高さは527mmと低く、自転車を積む時も、前輪を大きく持ち上げる必要はありません。荷室の床を反転させると、汚れを落としやすい素材が貼られ、自転車を運んだ後の手入れも簡単です。
収納設備も豊富で、インパネに装着されたカップホルダーには、500mlの紙パックも収まります。このようにルーミーは実用性が優れ、価格は中級に位置する標準グレードのGが174万3500円です。広い車内や多彩なシートアレンジを採用しながら、価格はヤリスGと同等なので、高い人気を得ました。
同様に背が高い軽自動車のN-BOXやタントも好調に売れているので、今のクルマのトレンドが良く分かります。自動車媒体が取り上げる価値の高い商品でもあるでしょう。
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