4月22日に発表された新型ヴェゼル。しかし、その姿は1カ月も前から先行情報サイトなどで公開され、予約も発表前から始まっていた。
近年は同じように正式な発表前に、外装の一部分だけ公開したり、車種によっては内外装のほとんどを見せてしまったり、市販型そのままのプロトタイプ車を自動車雑誌などの媒体を使って紹介するようなケースが増えている。
そもそも発表日があるのだから、その日に新型車の情報を公表すればいいのに、それよりも前にティザーなどで公開するのはナゼなのか?
文/渡辺陽一郎
写真/HONDA、TOYOTA、MITSUBISHI、ベストカー編集部
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■4月22日発表のヴェゼルもティザーキャンペーンを実施
最近はティザーキャンペーンを行う車種が増えた。正式な発売前に、ヘッドランプなど外観の一部、あるいは車両のシルエットなどを見せるものだ。披露する部分を段階的に増やし、最終的に外観すべてを見せるパターンもある。
最近、ティザーキャンペーンを実施していた車種はホンダの新型ヴェゼルだ。ヴェゼルは2021年2月18日に、外観や主な機能など、車両の概要を明らかにした。
その後に販売店では、3月5日から価格も明示して予約受注を開始。3月11日からは販売店がメーカーに車両の発注を行い、4月22日になって正式発表された(発売は23日)。
ヴェゼルに限らず最近の新型車では、まずティザーキャンペーンを行い、その後に販売店の受注を始めて正式発売に至るケースが多い。
最初に海外を含めてモーターショーで披露する車種も増えた。例えば現行レヴォーグは、2019年10月から開催された東京モーターショー2019で初披露された。この後、2020年8月に先行予約が開始され、10月には価格を含めて正式発表された。
11月に入ると納車を伴う発売となっている。これでは東京モーターショーの初披露で「新型レヴォーグを買おう」と考えたユーザーは、購入までに1年以上を費やしたことになる。
■新型車チラ見せのルーツは1960年、トヨタコロナ発表時にさかのぼる
ティザーキャンペーン自体は、目新しい手法ではない。例えば1960年に発売された2代目トヨタコロナでは、タイヤとホイールだけを残し、ボディの部分を白抜きにした広告を作った。そこに「Oh! アラッ! スゴイ!」というコピーを沿えている。
ただし2代目コロナがティザーキャンペーンを行った背景には、明らかな理由があった。1957年に発売した初代コロナの販売が低迷して、1959年に登場した初代日産ブルーバード(ダットサンの後継)に登録台数で負けていたことだ。
当時は車種の数が少ないから、コロナが販売合戦でブルーバードに負けると、メーカー全体の売れゆきに響く。国内で新車として販売された乗用車の登録台数シェアは、1960年当時、日産が33%でトヨタは27%に留まっていた。
そこで2代目コロナはティザーキャンペーンを実施して「凄いクルマが登場しますよ!」と期待を持たせた。発売時のインパクトを一層強めたわけだ。
しかし以前は、ティザーキャンペーンを行う車種は少なかった。ティザーキャンペーンを実施すると、その対象になる新型車の関心は高まるが、従来型の売れゆきは下がるからだ。次期型にフルモデルチェンジするまで、従来型を大切に売り切ろうと考えれば、ティザーキャンペーンは行えない。
新型車の売り出し方を今と以前で比べた時、最も異なるのはこの点だ。以前は新型の発売までその情報を徹底的に隠した。そして新型車が登場すると、TVや新聞で大々的な宣伝を行い、販売店に出かけると少なくとも展示車は用意されていた。
販売店の入口に行列ができて、警察官が交通整理をすることもあったほどだ。新型車の販売力を発売と同時に一気に放出させて、世間の関心を高め、好調な売れゆきに結び付けた。
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