祝日や休日は、サービス業にとって書き入れ時だ。カーディーラーも同様で、来店客数は、土日・祝日にピークを迎える。
しかし、GWやお盆、そして年末年始の大型連休には、店休日を設ける販売店が多い。大型連休こそ、来店客が増えて利益が上がるはず。そう思う読者もいるのではないだろうか。
そこで本稿では、元自動車ディーラー営業マンの筆者が、なぜカーディーラーは大型連休に休みになるのか、その理由を明かしていく。
文/佐々木亘 写真/pantovich-Stock.Adobe.com、編集部
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■新車ディーラーの客足は「土日」と「大型連休」で大きく異なる!?
販売店にとって土日・祝日は、勝負の日だ。最も来店客が多く、顧客との約束も取り付けやすい土日は、成約につながる商談が多くなる。
土日の営業では、細かな来店客の数や商談数、試乗の回数や査定数などの集計を取り、営業マンがどれだけ営業活動をおこなったのかを分析する販売店は多い。店舗にとっても、営業マンにとっても、土日(3連休の場合には月曜日も含む)は、アピールの場所になるわけだ。
それならば、大型連休でもお店を開けたほうが良いのではないかと考えたくなる。しかし、通常の土日・祝日と、GWやお盆、年末年始の大型連休では、顧客の動きは大きく変わってしまう。
現在は、新型コロナウイルスの影響で、巣ごもりが多くなっているが、例年のGWや年末年始はどう過ごしていたか、思い出してほしい。皆さんは、旅行に出かけ、故郷へ帰省していなかっただろうか。
大型連休では、商談約束をとりたくても、顧客は旅行や帰省で忙しい。レジャー気分が最高潮に高まり、とてもクルマの購入に時間を割いている場合ではないのだ。したがって、購買意欲が下火になる大型連休には、ディーラーは休みを取っていることが多くなっている。
■実録! 大型連休にディーラーを営業したらどうなった?
筆者は何度か、大型連休中の営業を経験している。この時期のショールームは、閑古鳥が鳴いていた。
大型連休中にお店を開けていると、来店するのは県外ナンバーのクルマがメインだ。なかでもカップルが、観光の途中なのか、デートコースに入っているのか、隣県からやってきて、ショールームをひと回りしていくことが多かった。
また、サービス工場では、定期点検や車検に入庫するクルマは少ない。大型連休にクルマを使って遠出をしたいユーザーが多く、マイカーを預けて点検をしている場合ではないのだろう。
そしてサービス工場には、故障車が飛び込みで入ってくる。こちらも多数は県外ナンバーだった。入庫理由はパンク、エンジンがかからない、事故を起こした、バッテリーがあがったなど。
ロードサービスからは、直接クルマを持ち込んだら対応してもらえるか、といった問い合わせも増える。まるで救急病院のような状態だ。
終日、同一県内の他社、もしくは他県客の、緊急対応に追われる。売り上げを意識した営業活動はほとんどできない。筆者は、この期間に注文書を作ったことは、ほとんどなかった。
故障車を受け入れるサービス工場でも、対応に苦慮することが多い。修理部品の供給元である、メーカーや部品共販店が、大型連休中に休みを取るためだ。
多くの販売店では、地域の部品共販店を通して、整備部品の供給を受けている。必要となる部品は、必要な時に都度発注する形だ。マフラーやバンパー、足回り、エンジン関連の部品は、共販店から送られてくるのを待つことになる。
大型連休中に事故が発生し、自走不能の状態になっても、すぐ直すことができないのが販売店の実情だ。
大型連休中に販売店が営業していれば、クルマの「困った」に関して、藁をも掴む思いで来店する人がいるのだが、その期待には応えられないことが多い。販売にしてもサービスにしても、潔く店を閉めるしかない事情がある。
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