日々のストレスが溜まってくると、ちょっとだけドライブに出かけたくなる、という方も多いのではないだろうか。都会から離れて、広々とした郊外に出かけると、身も心もリラックスし、ついつい油断をしてしまい、気づいたときには取り返しのつかない事態となってしまうことにも。
2021年11月からすべての国産新型車に自動ブレーキが義務化されるなど、未然に事故を防ぐ仕組みが進められてはいるが、これで事故をすべて防げるわけではない。とくに、車両相互の事故の中でも、都会の人が普段見ることがない、とあるシチュエーションで起きやすい「十勝型事故」(本文内で解説します)には、注意しないとならない。
文:吉川賢一
写真/資料:写真AC、内閣府
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追突事故は1番、出会い頭の事故は2番目に多い
国内では、年間43万件もの交通事故が発生している(平成30年警察庁公開のデータより)。なかでも、最も多い事故形態が「追突事故」で、全体の34.7%。「自動ブレーキの義務化」が進められたのも、この追突事故を防ぐためだ。自動ブレーキで追突事故が完全に防げるわけではないが、今後は、多少減少してくることも期待できる。
こうなると恐ろしいのは、その追突事故につづいて多い、出会い頭衝突(24.8%)だ。
判断ミスのほか「錯覚」による事故も
「出合い頭の衝突」とは、違なる方向から進入してきたクルマ同士がぶつかる事故のこと。交差点内で発生するケースが大半で、場合によっては死亡や重傷になることもある。
それらは、「標識の見落とし」や「思い込み」「認知ミス」など、ドライバーの判断ミスが原因だ。「ぼーっ」と運転していたり、携帯電話などに気を取られていたりすると、このような事故につながってしまう。
しかし、単純な注意散漫ではない「錯覚」で、出合い頭の衝突事故を引き起こしてしまうことがある。「十勝型事故」もしくは「田園型事故」と呼ばれるもので、「コリジョンコース現象」による事故形態だ。
コリジョンコース現象は、一点に向かって等しい速度で直線運動している2台のクルマや航空機同士が、お互いを認識しにくくなってしまうこと。
実は人間の視野は、横から近づくクルマを認識しづらい傾向にある。そのため、相手のクルマが近づいていたことに気づかない、あるいは止まって見えてしまうため、事故に繋がってしまうのだ。
周囲が明るくて、見晴らしがよい場合であっても起こりうる。開けた田園地帯の道のような、見通しのいい平原の真ん中の交差点等で発生しやすい。実際の事故事例をご紹介しよう。
●事故事例その1「若くても錯覚は起こる」
2017年5月午前7時頃、福島県棚倉町内の町道で、交差点に進入してきた乗用車と軽乗用車が出会い頭に衝突。この事故によって、双方のドライバーが重傷を負った。
福島県警によると、現場は棚倉町堤付近にある、車線区別がない道幅約3.5メートルの直線区間であり、交差点に信号機は設置されていなかった。乗用車と軽乗用車は両方とも、減速をせずに交差点へ進入し、出会い頭で衝突してしまった。
双方のクルマとも路外へ逸脱し、道路沿いの田んぼへ転落してクルマは大破。乗用車を運転していた男性と、軽乗用車を運転していた男性は、2人とも全身強打の重傷を負った。ドライバーは、どちらも若い男性であった。
●事故事例その2「ノーブレーキで…」
2015年6月、午前5時ごろ、岐阜県養老町内の町道で、交差点を進行中の軽ワゴン車と軽トラックが、出会い頭に衝突。この事故で、軽トラックを運転していた66歳の男性が死亡。
岐阜県警によると、現場は養老町田付近で幅員約3メートルの直線区間であり、田んぼの中にある交差点だった。信号機や標識は設置されておらず、軽ワゴン車と軽トラックの双方は減速しないまま交差点に進入。出会い頭に衝突した。
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