2021年1月から継続生産車もWLTCモードという新しい計測方法での燃費のカタログへの記載が義務付けられるようになった。
WLTCモードになりカタログ燃費はフィットハイブリッドで量販グレードとなっているHOMEを例に挙げると、1つ前のJC08モードの38.6km/Lから28.8km/Lと10km/L近く違うことに驚く。
当記事では燃費の計測方法がWLTCモードに変わった背景などを紹介しながら、WLTCモードの導入がユーザーにとって有益なのかを考えていこう。
文/永田恵一、写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部 トヨタ 日産
【画像ギャラリー】WLTCモードに準拠した実走行テストで結果を比較!
■WLTCモードが導入された背景
結論から書くとWLTCモードの導入はユーザーにとって、非常に有益といえる。なぜかといえばWLTCモード導入以前の日本のカタログ燃費は「実用燃費との乖離が大きい」というクレームが多かったからだ。
特にJC08モードの1つ前の燃費計測方法として1991年から20年ほど使われた10・15モード燃費の計測方法は、濃い燃料を使うため燃費に大きく影響する暖気は済んだ状態。
重量は大人二名乗車を想定しカタログ車重+110kg、加速はノンビリとしたもので最高速は70km/hという緩いものだったため、実用燃費との乖離が大きいのも当然だった。
という背景もあり、2013年3月以降カタログへの記載が義務付けられたJC08モード(2008年あたりからJC08モードをカタログに記載しているクルマもあった)が導入された。
JC08モードは暖気の済んでいない冷寒からの計測が25%含まれる、走行距離は約4kmだった10・15モードの倍となる8kmと長く、平均スピードは10・15モードの22.7km/hに対し24.4km/hとそれほど変わらないが、最高速は81.6km/hに高められ、加減速が増えたのに加え加速も機敏という厳しいものとなった
JC08モードの導入によりハイブリッドカーをはじめとした10・15モード燃費が30km/hを超えていたようなモデルのカタログ燃費は15%ほど低下し、大排気量車に代表される燃費の悪いクルマほどカタログ燃費と実用燃費の乖離が小さくなったという功績はあった。
しかし、それでも先代プリウスで一番の燃費の良かったLグレードを例に挙げると、10・15モード燃費38.0km/L、JC08モード燃費32.6km/Lと実用燃費が26.0km/L程度なのを考えると、燃費のいいクルマほどカタログ燃費と実用燃費との乖離がまだ小さくないというのも否めなかった。
そこに登場したのが日本でも2017年あたりからカタログへの記載が始まったWLTC(ワールドハーモナイズド・ライトビークル・テスト・サイクル)モードである。
WLTCモードは国連が決めたWLTP(ワールドハーモナイズド・ライトビークル・テスト・プロシージャ)モードを基に各国の道路環境に合わせたもので、簡単にまとめると国際的な燃費計測方法といえる。
WLTCモードの導入により大きく変わった点は、まず総合燃費に加え市街地、郊外路、高速道路という使用パターンごとの燃費も発表されることで、これによりモデルによる燃費の得手不得手も分かるようになった。そのほかのJC08モードに対する違いとしては
●計測はすべて暖気も含まれる冷寒からのコールドスタート
●加減速は激しく、加減速の頻度も増えている
●最高速は市街地56.5km/h、郊外路76.6km/h、高速道路97.6km/hと高い
●試験の際の重量はカタログ車重+100kg(乗員1人と手荷物を想定)+乗用車で積載可能重量の15%と重い
●アイドリングの時間は減っている
と、JC08モードに比べ大幅に厳しいものとなっており、カタログ燃費が実用燃費に近づくことは容易に想像できる。
WLTCモードの導入はJC08モードまであった等価慣性重量(計測の際にクルマに掛ける負荷)の区分がなくなったので、燃料タンクを小さくするなどして車重を区分ギリギリに軽量化した燃費スペシャル的なグレードの設定に意味がなくなった。
さらに国際的な燃費計測方法なので輸出の際に仕向地の認可を取る手間が減るなどのメリットもある。
コメント
コメントの使い方