デビュー当時、月間12万台の受注を確保し、度肝を抜く人気を誇っていたトヨタ アクア。2012年10月には、プリウスが守り続けた新車販売台数1位の座を奪い、名実ともに日本を代表するクルマとなった。
飛ぶ鳥を落とす勢いで売れ続けてきたアクアだが、最近の調子は芳しくない。2020年1年間の販売台数は5万9548台にとどまり、前年比57.4%に終わった。同門コンパクトのヤリスにはもちろん、ライズ、ルーミー、シエンタに対しても、大きく溝を開けられ、影が薄くなってきている。
7月にモデルチェンジを迎えるアクアだが、大人気コンパクトが並ぶトヨタのなかで、アクアが果たしていくべき役割は何なのか。販売店への取材で見えてきた、アクアの今後について考える。
文/佐々木亘、写真/TOYOTA、CG/ベストカー編集部
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■ハイブリッドを「当たり前の存在」にしたアクア
プリウスがハイブリッドを知らしめたクルマであれば、アクアはハイブリッドを当たり前にしたクルマであると筆者は思う。
キーを回し、クランキング音を聞いてエンジンをかけていた世代には、プッシュ式スタートスイッチや、ハイブリッド特有のREADY ONには大きな違和感があっただろう。
ハイブリット車の操作方法のなかで、エレクトロシフトマチックに抵抗がある中高年層は多かった。
現在ではトヨタハイブリッドだけではなく、ホンダ、日産、三菱など多くのメーカーで採用されている方式だが、10年前には非常に珍しいシフト形状である。当時プリウスのシフト操作に難色を示すユーザーは多く、「ハイブリッドはこのシフトしかないのか」と、何度も言われた経験がある。
初代アクアは、ゲート式シフトやサイドブレーキを備え、ベーシックなクルマの操作感を損なっていなかった。普通のクルマと同じように操作できるアクアは、ハイブリッドを希望する中高年世代にも、広く受け入れられる存在となる。
当時、アクアだけの特徴だった「コンパクトハイブリット」そして「普通な操作」という点は、カローラやヤリスなど、多くのトヨタ車に受け継がれていく。その人気に押される形でアクアの販売台数は右肩下がりに落ちていった。
これからアクアが目指す立場は、単なる使いやすいコンパクトハイブリッドではない。ワンランク上の上級コンパクトを目指し、ヤリスと差別化を図るべきだ。今年夏にモデルチェンジをするアクアには、上級コンパクトの見ることができるのだろうか。
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