トヨタが上海モーターショーで発表した新EVシリーズ「TOYOTA bZ」のパートナー企業に、中国で電気自動車(バスを含む)の開発・製造を行っている企業「BYD」の名前が入っていた。
中国企業ということで、難色を示す読者もいるかもしれないが、日本でも京都や沖縄でBYD製のEVバスが多数導入されるなど、進出が進んでいる。とはいえ、あまり知らないという人のほうが大勢を占めるのではないだろうか?
今回は、BYDとはいかなる企業なのか? トヨタ1社でも進められそうなのに、あえてBYDと組んだのはナゼなのか? 中国事情に詳しい近藤大介氏が詳しく解説していく。
文/近藤大介(現代ビジネス編集部)
写真/TOYOTA、BYD
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■日本人の知らないBYDは中国では超メジャーな自動車メーカーだった!!
2021年4月19日から28日まで開催された「上海モーターショー」で、トヨタが発表した新EVシリーズ「TOYOTA bZ」の中国側パートナーに、BYDの名前があった。日本ではBYDって何? との声も上がっているが……。
30年以上にわたって中国取材・研究を続けている私から見たら、中国では、BYDはトヨタよりも有名な会社だ。2018年春には、CCTV(中国中央広播電視総台)が選出した「中国ブランド18社」の中に、自動車メーカーとして唯一選ばれた。習近平政権が進める「中国ブランド強化策」によって、中国14億の家庭には、CCTVが制作したBYDを称える特集CMが流れている。
BYDは、漢字で書くと「比亜迪」。「ビーヤーディ」と発音する。「アジアの他社よりも道を開く」という意味に取れ、アジアでナンバー1の自動車メーカーを目指すという気概を感じる社名だ。
BYDは、1995年に王伝福(おう・でんふく)CEOが、香港に接する広東省深圳(しんせん)で創業した。現在55歳の王伝福は、2021年のフォーブス世界長者番付で118位、163億ドル(約1.8兆円)という途方もない資産を誇る立志伝中の人物だ。
王は1966年、安徽省の貧農家庭に生まれ、湖南省長沙の中南大学冶金学部を卒業。北京有色金属研究所で修士号を取得し、同研究所で金属を分析する研究者だった。
この頃、中国で一世を風靡していたのが、米モトローラの携帯電話だった。今後、中国で携帯電話が大量に普及していくと見込んだ当時29歳の王は、携帯電話のバッテリー電池を作る会社を創業した。これがBYDである。
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