警察庁の「犯罪統計資料」によると、2020年の自動車盗難認知件数は5210件。日本のどこかで、1日あたり14台以上のクルマが盗まれていることになる。(警察庁調査における)ピーク時の2003年での年間64,223件に比べるとずいぶん減少したものの、いまも多くの車両盗難被害が出ていることに変わりない。
日本損害保険協会が調査した車種別盗難被害車両を見ると、絶対数でいえばランドクルーザーがワースト1であることは前年から変わりないが、近年大幅に被害件数を増やしているのがレクサスLX。調査してみると、地域によっては5台に1台のレクサスLXが盗まれているという。
この実態を改めて紹介するとともに、なぜレクサスLXが被害に遭うのか。取材した。
文/加藤久美子 写真/TOYOTA 表/日本損害保険協会、愛知県警
【画像ギャラリー】1100万円からの国産最高級SUV「LX570」を画像でチェック
■レクサスLXやランドクルーザーの盗難件数が急増!
まずは以下の表を見ていただきたい。
上記「車名別盗難状況~車両本体盗難」のデータは、一般社団法人日本損害保険協会が2000年度から毎年公表している自動車本体盗難事故や車上ねらい事故を実態調査したものだ。
2018年11月の調査では、
1位レクサス(全車種合計)で構成比は23.8%
3位ランドクルーザー 12.6%
2020年2月ではレクサスは車種ごとにわけられて調査されるようになり、
1位ランドクルーザー 18.1%
3位レクサスLX 10.8%
【2020年11月】
1位ランドクルーザー 15.8%
2位レクサスLX 13.9%
と、このようにじわじわとLXの盗難比率が上がってきている。
その結果は車種別の盗難台数及び盗難率のデータでも明らかになっており、これによると2020年は1000台中約50台のLXが盗難されている。
また、2021年2月に愛知県警から発表されたデータによると、LXの盗難が特に多い愛知県では2020年1年間、LXの盗難が過去最高となってしまった。その数字は、2019年が59台だったところ、2020年はなんと119台!
わずか1年間で2倍以上!これは愛知県内で登録されているレクサスLXの5台に1台が盗まれた計算になるという。
猛烈な勢いで増える盗難に対して愛知県自動車盗難等防止協議会は今年5月に啓発動画を公開しており、以下のことを伝えている。
①愛知県内の盗難車 4割が「レクサスLX/レクサスRX/ランドクルーザー」
②盗難されないためには、後付けセキュリティ装置を複数組み合わせる。ハンドルロックやセキュリティアラーム、タイヤロックなど。
➂音と光で威嚇するセキュリティがおすすめ
しかし、この内容はほとんどが自動車セキュリティの一般論でどんなクルマにも当てはまる。LXやランドクルーザー特有の諸々の傾向や手口が分かりにくい。
ということで、『自動車盗難情報局』を運営し、みずからもセキュリティプロショップA2Mにて高レベルのセキュリティ装置を販売&取り付けを行う撹上(かくあげ)智久氏に詳しい状況や対策を聞いてみた。
■LXが盗まれる意外な理由は「純正セキュリティ」?
LXとランドクルーザーはなぜこんなにも盗まれやすく、また近年盗難台数が急増しているのだろうか?
撹上氏が実際に盗まれたLXを10台以上、調べてみたところ、意外な事実がわかってきた。
「自動車盗難情報局にこれまで盗難車として登録されてきたレクサス車を調べたところ、LXを含めてほとんどのレクサス車には社外セキュリティがついていませんでした。『純正セキュリティをつけているから大丈夫』『レクサスにはG-Link(車が24時間インターネットに接続されているサービス)があるから盗まれても追跡できるしエンジン停止もできるから安心』ことが理由だと思われます。」
確かに、純正セキュリティや純正のGPSでクルマの位置が分かるサービスは安心と思ってしまうが、実は純正だからこそ危ないと言えそうだ。純正セキュリティはどのクルマも同じ仕様で同じ場所にユニットなどが配置されている。
窃盗団はLXの中古車を購入するなどして、徹底的に調べ上げてセキュリティやGPSユニットの場所を調べればいいだけの話。純正だから、1台分かればあとは一緒。実に危険な状況なのである。
社外セキュリティは必須と言えるだろう。
ランドクルーザーを盗まれた筆者の知人の場合、朝、起きて駐車場を見たらクルマがない!慌てて、スマホでクルマの位置をチェックしてみたところ…。意外にもクルマは自宅駐車場にあると表示された。そして駐車場に行ってみたら、そこにはGPSのユニットだけが転がっていた…。そんな笑えない話もある。
■LXを盗まれないクルマにするには?
では、LXを盗まれないようにするには、どのような対策を講じればいいのだろうか?
前述の撹上氏に教えていただいた内容をまとめてみた。
①誤報がない&スマートキー連動しない社外セキュリティを選ぶ
まず、社外セキュリティはリモコンがスマートキーと連動しないタイプが必須。リレーアタックで盗まれた際、オフにされるとセキュリティが働かなくなるのでセキュリティ用のリモコンが独立しているタイプを選ぶ。
誤報がないことも重要。誤報の発生は近所迷惑になることから、肝心な時にセキュリティを切っていて役立たず…ということもありうる。撹上氏によると、ユピテルのゴルゴやパンテーラなど日本の住宅事情や使用状況を熟知した国内メーカーのセキュリティがおすすめとのことだ。
②セキュリティレベルが高いものを選ぶ 予算は20-50万円
しっかりとしたカーセキュリティの装着が必須。機種にもよるが信頼できる誤報がほぼ皆無のカーセキュリティは20-50万円で取り付けができる。この金額ならLXを買う人にとってはそれほど高額でもなさそうだ。
他の車種なら安価なセキュリティシステムで充分な対策ができたとしても、LX狙いの窃盗団は盗難技術も非常に高い。だからこそセキュリティレベルが高いものを実績のあるプロショップで取り付けてもらうことがベストだ。
③ハンドルロックやタイヤロックを使用する
ハンドルロックやタイヤロックは切断されてしまえばダメだが、窃盗団がクルマを動かすまでの時間稼ぎとしてなら効果を発揮する場合もある。バイク用の強固な鎖を使うのもおすすめだ。「防犯対策をしている」というアピールにもなる。
④ボディカバーをかけておく
窃盗団は必ず事前に下見を行って、狙うクルマの駐車場所や防犯装置の有無、周辺環境などを確認している。
最近ではストリートビューで探すことも多いそうなので、ぱっと見でわからないようボディカバーをかけておくのも防犯対策になる。
■LXを含むレクサスが狙われやすいもう一つの理由とは
最後にもうひとつ。レクサスの盗難が急増している背景についてお伝えしておきたい。それは駐車場所とレクサス特有の「盗まれ方」に関することである。
警察庁生活安全企画課が2021年3月に発表した統計によると2020年「クルマが盗まれる場所」として最も多かったのは「一般住宅」(自宅駐車場)で36.8%、「(契約)駐車場」(30.7%)がこれに続いている。調査開始以来、初めて一般住宅で盗まれるケースが1位となったわけだ。
ちなみに、調査が開始された2002年では駐車場61.2%/一般住宅8.2%と自宅外の駐車場で盗まれることが圧倒的に多かったが、その後少しずつ一般住宅での盗難が増えてついに2020年には一般住宅がトップとなった。
コメント
コメントの使い方それはセキュリティと言いません。
数千万もする車なんですよね❓