新車市場では、相変わらずSUV人気が続いているが、中古車市場でも変わらないのだろうか?
また、昔からSUVの中古車は、10万kmオーバーの過走行車でも値落ちが少ないという話もよく聞く。本当なのだろうか?
そこで、中古車市場を調べ、中古車になってもぜんぜん値落ちしない現行モデルのSUVについて、萩原文博氏が解説する。
文/萩原文博
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部 トヨタ スズキ
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値落ちしないSUVはどのクルマ?
中古車は人気が価格に大きな影響を及ぼす商品だ。したがって同じカテゴリーのクルマで、新車時の価格がそれほど変わらなくても中古車価格は大きく差が付くことは多い。
裏を返せば人気薄のクルマを狙えば価格が安くて品質が高いクルマが購入できるということである。今回は人気が高くてなかなか値落ちが進まないというSUVの中古車を取り上げてみたい。
グローバルマーケットではSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)は人気が高い。
日本市場においても同様だ。最近デビューしたトヨタのSUVだけでも、2019年4月のRAV4、同年11月のライズ。そして2020年6月にハリアー、同年8月にヤリスクロスを発売。ピックアップトラックのハイラックスを含めるとSUVだけでも8車種という多彩なラインナップとなっている。
それほど人気が高く絶好調のSUVだが、その人気を反映して中古車となっても値落ちの進まない車種がある。
一般的にクルマは新車登録すると年式が古くなり、走行距離が延びたりすると中古車の価格は安くなっていくのだが、SUVのなかにはなかなか値落ちが進まない車種がある。
そこで今回は、中古になってもあまり値落ちの進まないSUVと題して現行モデルのなかから5車種ピックアップしてみた。はたして、これらのクルマにはどんな共通項があるのだろうか。
ランドクルーザー200:不動の人気、過走行車でも高値傾向
なかなか値落ちしないSUVとして、まず取りあげたいのが2007年9月に登場したランドクルーザー200だ。
現行型は登場から13年も経過したロングセラーモデルとなっている。ランドクルーザー200がいかに値落ちが進まないのかを買取価格で見てみよう。
調べたグレードは新車価格597万9600円のAX Gエディション。5年落ちの2015年式だ。2015年8月にエクステリアの大幅なマイナーチェンジが行われており、買取価格はマイナーチェンジ前が約303万円、マイナーチェンジ後は約395万円となっている。
10年落ちとなる2010年式でも買取価格は約209万円。そして13年落ちとなるデビューイヤーの2007年式でも約178万円となっているのだ。
もちろん、コンディションによって上下するが、一応これが水準となる価格といえる。
これを残価率に置き換えてみると、5年落ちのマイチェン後が約66%、マイチェン前が約51%。10年落ちが約35%そして、13年落ちでも約29.7%もあるのだ。
この数字がいかに凄いのかを証明するために比較してみた。最近「セダン離れ」と言われるので、セダンのなかからロングセラーモデルの日産フーガのハイブリッドVIPを調べてみた。
フーガハイブリッドVIPの新車価格は723万981円で、5年落ちの2015年式の買取価格は約179万円。
そして10年落ちとなる2010年式は約55万円。残価率は2015年式が約24.7%、そして2010年式は約7.6%。
最近はセダンが人気薄ということもあるが、ランドクルーザー200と比較するとこれだけの差がある。これは買取価格なので、ランドクルーザー200の販売価格はさらに高くなるということになる。

これを踏まえて、改めてランドクルーザー200の中古車相場の推移を見てみたい。
現在、ランドクルーザー200の中古車は約190台流通している。3ヵ月前の時点では約250台流通していたので、減少傾向となっている。
流通している中古車の平均走行距離は3ヵ月前の約3.7万kmから現在は約3万kmまで減少。この動きに伴って、平均価格は約461万円だった3ヵ月前から現在は約550万円まで値上がりしている。
ランドクルーザー200の中古車の価格帯は約198万~約1036万円で、高価格帯にはカスタマイズ車が多く流通しており、新車価格を上回っている状況だ。
走行距離別でランドクルーザー200の中古車価格を見てみると、5万~6万kmだと約268万~約748万円。
10万~11万kmでは約228万~約368万円。そして20万km超でも約198万円という価格となっているのだ。
対象となる中古車は1台しかないとはいえ、走行距離23万kmという中古車が200万円近い価格で販売されているのを見るとランドクルーザー200の人気の高さがうかがえる。
新型ランドクルーザー300の登場が2021年9月と言われているが、その影響はあまり受けていないようだ。
ランドクルーザープラド:ディーゼルターボが高値傾向で値落ちが少ない

続いて、トヨタランドクルーザープラドだ。現行型プラドは2009年に登場し、すでに11年が経過したロングセラーモデルだが、2020年にディーゼルエンジンの出力向上を行っており、人気もまだまだ衰えていない。
現行型プラドの中古車の流通台数は3ヵ月前の約990台から現在は約1320台へと増加傾向だ。
流通している中古車の平均走行距離は一時期増減した時期もあったが、直近3ヵ月の間、約1.6万km付近でほぼ横這いとなっている。
これにリンクして、平均価格は3ヵ月前の約372万円から緩やかに上昇し現在は約384万円となっている。
現行型プラドの中古車の価格帯は約159万~約696万円。走行距離5万~6万kmの価格帯は約190万~約498万円。走行距離が10万~11万kmになると約163万~約378万円となっている。
グレードではガソリン車の2.7TX、TX Lパッケージが多いが、相場が高く値落ちしないのは2.8ディーゼルターボエンジン搭載車となっている。
レクサスLX:走行距離の長さに関係なく高値をキープする規格外の車種
これまで紹介した2台は10年以上販売されているロングセラーモデルだったが、続いて紹介するのは2015年に登場したレクサスLXだ。
国産SUVで唯一1000万円を超えるレクサスブランドのフラッグシップSUVだが、このモデルも値落ちが進まないモデルだ。
新車価格は1135万6481円だが、中古車の平均価格は3ヵ月前の約916万円から現在は936万円と値上がり傾向となっている。
中古車の流通台数は3ヵ月前の約90台、現在は約84台とほぼ横這い。しかし中古車の平均走行距離は約1.9万kmだった3ヵ月前から現在は約2.4万kmまで延びているにも関わらず、値上がり傾向となっているのだ。
レクサスLXの中古車の価格帯は、約720万~約1329万円。最も安い5年落ちの中古車でも残価率は約63.3%とこちらの数値も驚異的な高さを誇っている。
走行距離5万~6万kmの中古車相場を見てみると、約720万~約928万円と非常に高い。
さらに走行距離6万km以上に絞っても約799万~約880万円とほとんど変わらない。レクサスLXは走行距離の長さに関係なく高値をキープする規格外の車種だ。
スズキジムニー:新車時価格より高いプレミアム価格で販売されている
続いては、2018年7月発売と、まだ登場から日が浅い現行型スズキジムニーだ。
ジムニーはフルモデルチェンジを行っても旧型、旧々型の値落ちが進まない車種としてよく知られている。
現行型ジムニーは新車の納期が1年待ちといわれる人気車種だが、中古車は、3ヵ月前の約350台から現在は約800台と倍増している珍現象が起きている。
流通している中古車の平均走行距離は約1000km付近を横這いで推移しているが、平均価格は3ヵ月前の約240万円から現在は236万円へとゆるやかに値落ちしている。
しかしジムニーの新車価格は148.5万~187.55万円なので、依然として新車時の価格より高い、プレミアム価格が続いているのがわかる。
現行型ジムニーの中古車の価格帯は約159万~約388万円で高価格帯にはカスタム済みの中古車がズラリと並んでいる。
登場してからまだ2年が経過したばかりだが、走行距離3万km以上の中古車の価格は約194万~約240万円とまだ新車時価格を上回っている。ジムニー中古車のプレミアム価格はいつ終わるのだろうか。
ジムニーシエラ:中古車の平均価格が新車時価格を50万円も上回るプレミアム相場
そして、ジムニー以上にプレミアム価格となっているのが、2018年7月に登場したジムニーシエラだ。
中古車流通台数は3ヵ月前の約200台から現在は約300台へと増加傾向。中古車の平均走行距離は約1000km付近に留まっており、この動きに連動して、平均価格は約261万だった3ヵ月前から現在は約258万円とわずかに値落ち。
しかし、ジムニーシエラの新車価格は179.3万~205.7万円なので、中古車の平均価格が新車時価格を50万円も上回るプレミアム相場となっているのだ。
現行型ジムニーシエラの中古車の価格帯は約210万~約358万円で、270万円以上はカスタマイズ車となっている。
走行距離3万km以上でも価格は約236万~約258万円となっているので、ジムニー以上のプレミアム価格となっており、新車の納期が1年以上と言われているので、このプレミアム相場はしばらく収まりそうにない。
こうして、値落ちの進まないSUVを5車種ピックアップしたのだが、共通項はいずれも直線的なデザインで、本格的な悪路走破性を備えているタフギア系のモデルばかり。
やはりこういったモデルは、厳しい道路環境においても力を発揮するモデルばかりなので、その高い走行性能によって走行距離が延びても引く手あまたということなのだろう。