コンパクトカー市場ではヤリスやフィット、ノートが販売合戦を繰り広げているが、そんな中発売後1年で一部改良を行ったホンダフィット。
ライバルとの販売競争では、フィットは少し苦戦していることもあり、商品力の強化が行われたわけだ。そこで、ライバルと比較したフィットの実力を渡辺陽一郎氏にチェックしてもらった!
文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部
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■フィットの居住性や走りは優秀なのに、なぜ販売面でヤリスに勝てないの?
最近は安全装備や環境性能が向上して、消費税率も高まったから、クルマの価格も値上げされている。同じ車種同士で比べて、クルマの価格は10年前の1.2~1.3倍に上昇した。
その一方で平均所得は増えていない。約20年前に比べると下がっているほどだから、小さな車種に乗り替えるユーザーが増えた。今は国内で新車として売られるクルマの内、約38%が軽自動車で、約25%は全長が4m前後のコンパクトカーだ。国内販売全体の60%以上を小さなクルマが占める。
この中でも特に注目されるのが、コンパクトカーの主力となるヤリス、フィット、ノートだ。売れ筋のカテゴリーで、3車のすべてが2020年に発売されたから設計も新しい。いずれも衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備を充実させ、ハイブリッドも用意する(ノートはハイブリッドのe-POWERのみ)。
そこで2021年1~6月の1か月平均登録台数を見ると、ヤリスは約9300台(SUVのヤリスクロスとスポーツモデルのGRヤリスを除く)、ノートは約7800台、フィットは約5000台だ。
ノートはe-POWERだけで7000台を超えるのに、フィットはノーマルエンジンも用意しながら5000台に留まる。ヤリスに比べて大幅に少ない。
このような事情もあり、フィットは2021年6月に改良を行って通信機能などを進化させ、2種類の特別仕様車も追加した。ヤリスとの比較を交えてながら、フィットが売れていない理由を考えたい。
■ヤリス&フィット、ライバル車同士を徹底的に比較する
まずは商品力を比べる。内装の質は見る人によって評価が分かれるが、フィットの2本スポークステアリングホイールなどは、好き嫌いがハッキリするだろう。ヤリスの内装も質感が高いわけではないが、万人向けのデザインだ。
居住性はフィットが優れている。身長170cmの大人4名がヤリスに乗車すると、後席に座る乗員の膝先空間は、握りコブシ1つ少々だ。4名乗車は可能だが、窮屈に感じる。
その点でフィットでは、同じ測り方で後席に座る乗員の膝先空間は、握りコブシ2つ半だ。ミドルサイズセダン並みの余裕があり、4名で乗車した時の快適性はフィットが明らかに上まわる。
荷室もフィットが広い。燃料タンクを前席の下に搭載したから、荷室の床が低く、積載容量も十分に確保した。ヤリスはリヤゲートを寝かせた影響もあり、背の高い荷物を積みにくい。
視界もフィットが優れている。現行型ではフロントピラー(柱)の形状を工夫して、インパネ上面も平らに仕上げたから、前方がヤリスよりも見やすい。ボディ側面の形状も水平基調だから、斜め後方の視界もフィットが上まわる。
動力性能は、ハイブリッドについては、フィットのe:HEVが勝っている。直列4気筒1.5Lエンジンは主に発電機を作動させ、駆動はモーターが担当するから、フィットはヤリスよりも加速が滑らかでノイズも小さい。
ヤリスハイブリッドはボディが軽く、走りに軽快感は伴うが、登坂路では直列3気筒エンジン特有のノイズが耳障りに感じる。
ノーマルエンジンは、フィットは直列4気筒1.3Lのみで、ヤリスは直列3気筒の1Lと1.5Lを用意する。フィットの動力性能は、ヤリスでいえば1Lと1.5Lの中間だ。フィットはボディが重いので、1.3Lではヤリスの1.5Lに比べて動力性能が足りない。
その半面、4気筒だから、登坂路でアクセルペダルを踏み増した時のノイズはヤリスの1.5Lに比べて気にならない。回転感覚も上質だ。ヤリスの1Lエンジンは、動力性能が低く、登坂路ではノイズが一層拡大する。
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