24時間耐久レースを「完走」。トヨタが水素エンジンで見据える未来とは??【クルマの達人になる Vol.577】

24時間耐久レースを「完走」。トヨタが水素エンジンで見据える未来とは??【クルマの達人になる Vol.577】

 2021年5月22日、富士スピードウェイで行われた「スーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook 第3戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」。

 今回ここで一際注目を集めたのが、水素エンジンを搭載したカローラスポーツを駆り参戦を果たしたトヨタGAZOOレーシング、およびルーキーレーシングだ。

 結果は見事「完走」。しかし今回の結果だけでは未来は語れない。果たして水素エンジンの実用化は近いのか? 自動車評論家・国沢光宏氏に聞いた。

※本稿は2021年6月のものです
文/国沢光宏 写真/TOYOTA
初出/ベストカー2021年7月10日号

【画像ギャラリー】水素エンジンを積んだカローラスポーツ、およびレースの様子をギャラリーで詳報!


■水素エンジンと燃料電池の効率を比べてみる

 モリゾウさんが水素エンジン車を搭載したカローラスポーツで24時間耐久レースに出場。みごと完走するや、メディアは水素エンジン祭りになっている。

 グーグルで「水素エンジン」を検索すると、驚いたことにポジティブな記事ばっかり!

 10本くらい読んでみたら「日本の強味は既存の技術を活かせる水素エンジンですね!」みたいな気分にさせられる。

富士スピードウェイで行われた24時間耐久レースに参戦したカローラスポーツ(車両はテスト走行時のもの)
富士スピードウェイで行われた24時間耐久レースに参戦したカローラスポーツ(車両はテスト走行時のもの)

 果たして水素エンジンの実用化は近いのか? 達人向けに冷静かつ客観的な考察をしてみた。

 まず水素エンジンと燃料電池の効率だが、今回のようにアクセル全開のサーキット走行をした場合、データ見るかぎり燃料電池と大差ない気がする。

 同じ条件で比べたワケじゃないけれど、7kgほどの水素で50km程度走れている。

 従来型MIRAIだと4kgほどの水素で50km走れます。

水素エンジンのイメージ画像。「MIRAI」等に使用されている燃料電池(FC)が、水素を空気中の酸素と化学反応させて電気を発生させモーターを駆動させるのに対し、水素エンジンは、ガソリンエンジンから燃料供給系と噴射系を変更し、水素を燃焼させることで動力を発生させる
水素エンジンのイメージ画像。「MIRAI」等に使用されている燃料電池(FC)が、水素を空気中の酸素と化学反応させて電気を発生させモーターを駆動させるのに対し、水素エンジンは、ガソリンエンジンから燃料供給系と噴射系を変更し、水素を燃焼させることで動力を発生させる
MIRAIに代表される燃料電池自動車(FCV)の仕組みの説明図。酸素と水素を「燃料電池」に取り込んで電気をつくり、その電気でモーターを回して走るクルマがFCV(画像はトヨタ自動車ホームページ「MIRAIと水素のFAQ」より)
MIRAIに代表される燃料電池自動車(FCV)の仕組みの説明図。酸素と水素を「燃料電池」に取り込んで電気をつくり、その電気でモーターを回して走るクルマがFCV(画像はトヨタ自動車ホームページ「MIRAIと水素のFAQ」より)

 これだけ考えたら水素エンジンのほうが悪く感じるものの、エンジンは2分6秒くらい。燃料電池だと2分18秒くらい。2分6秒で走ろうとしたら、同じくらいの消費量になると思う。

 一般車だとどうか? 新型MIRAIの燃費は水素1kgあたり120kmくらいだ。

 水素エンジン車を考察してみよう。今回の24時間レース、前述のとおり満充填で50kmくらい走っている。

 ガソリンエンジンだったら燃費3km/L弱といったあたり。すなわち7kgの水素でガソリンなら18L程度のエネルギー量です。

 水素エンジンを25km/Lのハイブリッド車用のパワーユニットにすると航続距離450kmになるだろう。

 加えて水素を7kg充填できるタンクを積もうとしたら大きなスペースを使ってしまう。

 水素エンジンのカローラ、リアの居住スペースいっぱいに4本の水素タンクを搭載していた。

こちらもテスト走行時の画像だが、後部座席エリアにはなにやら大型のものが詰め込まれている様子が伺える
こちらもテスト走行時の画像だが、後部座席エリアにはなにやら大型のものが詰め込まれている様子が伺える

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