世界的に苛烈な競争が続いている小型SUVジャンルにおいて、2020年8月の登場以来、大ヒットを続けているヤリスクロス。2021年に入ってからも快進撃を続けており、2021年1~6月の累計販売台数は55150台。ハリアー(48271台)やライズ(47964台)を抑えて国内のSUVジャンル販売台数で堂々の1位に輝いている。
そんなヤリスクロスも、純ガソリン仕様とハイブリッド仕様が用意され、グレードごとに装備も複雑なもよう。「欲しい!」と思った皆さま、販売店へ行く前に、ぜひ当記事をじっくり読んで購入前の参考にしていただきたい。
文/諸星陽一
写真/TOYOTA
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■ヤリスクロス登場年月と最近の改良
ヤリスクロスはヤリスと同じGA-Bプラットフォームを用いて作られたBセグメントのSUVです。日本では2020年8月に発表、発売となりました。
2021年5月に専用キーでドアを解錠すると急アクセル時の加速を制御するプラスサポートが作動するシステムがディーラーオプションとして設定されましたが、それ以外の変更、改良は行われていません。
グレード構成を整理しましょう。パワーユニットと駆動方式は次のようになります。ミッションはすべてCVTで、ヤリスに設定のあったMTや1.0リットルガソリンエンジンは用意されません。
・1.5リットルハイブリッド FF/4WD
・1.5リットルガソリン FF/4WD
ガソリン車の4WDはプロペラシャフトを介してリヤに駆動を伝達する機械式4WDですが、ハイブリッド車の場合はリヤにモーターを配置したE-Fourとなります。ヤリス同様にX・Bパッケージはトヨタ・セーフティセンス(ASV=先進安全自動車)関連の装備がザックリ削られるので、購入対象から外すべきグレードです。
ヤリスではXとX・Bパッケージの価格差が6万円と比較的少額でしたが、ヤリスクロスの場合は9万8000円と開きが大きくなります。しかし、いわゆる自動ブレーキを省略して買うのは現代的なクルマの買い方ではないでしょう。
■グレード別装備
各パワーユニットと駆動方式のスペックは以下のとおりとなります。
●1.5リットルハイブリッド
エンジン:91馬力/120Nm
フロントモーター:80馬力/141Nm
リヤモーター(4WDのみ):5.3馬力/52Nm
ミッション:電気式CVT
●1.5リットルガソリン
エンジン:120馬力/145Nm
ミッション:ギヤ機構付きCVT
「X・Bパッケージ」以外に標準装備されるトヨタセーフティセンスに含まれる安全機構は以下のものです。
・プリクラッシュセーフティ(昼夜歩行者、昼間自転車運転者の検知機能付きの衝突回避支援タイプ)
・レーントレーシングアシスト
・全車速追従機能付きレーダークルーズコントロール(ACC)
・オートマチックハイビーム
・ロードサインアシスト
ヤリスではグレードによってACCが標準、またはオプションとなっていましたが、ヤリスクロスはX・Bパッケージ以外で全車標準なので、この部分で悩むことはなくなるでしょう。主要装備品の差を列記しつつ、装備品の解説をしていきます。
●タイヤ&ホイール
Z系:215/50R18+アルミホイール
G系:205/65R16+アルミホイール(Z系のものをオプション選択可、8万3600円)
X系:205/65R16+樹脂フルキャップ付きスチールホイール(G系のものをオプション選択可、6万500円)
アルミホイールはスタイリング上欲しいという方も多いでしょうが、スチールホイールにしたからといって極端に性能がダウンするわけではありません。Z系およびG系のオプションではタイヤ&ホイールが18インチとなります。
タイヤは消耗品で、摩耗したら交換する必要があります。マッチングがよさそうなタイヤの価格を検索したところ最低価格で18インチは1万4000円程度、16インチは1万円程度でしたのでその差は4000円、交換時には4本で1万6000円の出費高となります。
●ヘッドライト
Z系:マニュアルレベリング付きLEDヘッドライト+LEDクリアランスランプ+LEDデイタイムランニングランプ(ターン機能付き)
G系:ハロゲン+ターンランプ+LEDクリアランスランプ+LEDデイタイムランニングランプ(Z系のものをリヤコンビランプとセットでオプション選択可、7万1500円)
X系:ハロゲン+ターンランプ+LEDクリアランスランプ+LEDデイタイムランニングランプ(Z系のものをリヤコンビランプとセットでオプション選択可、7万1500円)
●リヤコンビランプ
Z系:LEDライン発光テールランプ&ストップランプ+LEDターンランプ+LEDバックアップランプ
G系:LEDテール&ストップランプ(Z系のものをヘッドライトとセットでオプション選択可)
X系:LEDテール&ストップランプ(Z系のものをヘッドライトとセットでオプション選択可)
●アダプティブハイビームシステム
Z系:オプション(9万9000円、一部装備とセット)
G系:装着不可
X系:装着不可
LEDヘッドライトは夜間走行時の見えやすさをアップすると考えられがちですが、かならずしもそうとは言い切れません。晴天時の夜ならばLEDのヘッドライトはくっきりとした見え方で対象物が見やすくなりますが、少し霧が出ているような状態ではハロゲンのほうが見やすいこともあります。
また降雪時の場合、ハロゲンはヘッドライトのレンズに付着した雪を熱で解かすことができますが、LEDは発熱が少ないので雪が解けにくいということがあります。ただし、スタイング的にはヘッドライトから白い光を放つLED式はスタイリッシュに見えます。
また降雪時の場合、ハロゲンはヘッドライトのレンズに付着した雪を熱で解かすことができますが、LEDは発熱が少ないので雪が解けにくいということがあります。ただし、スタイング的にはヘッドライトから白い光を放つLED式はスタイリッシュに見えます。
●メーター
Z系:オプティトロン(ハイブリッドは専用タイプ)
G系:デジタル(ハイブリッドは専用タイプ)
X系:デジタル(ハイブリッドは専用タイプ)
ヤリスクロスのメーターはZ系がオプティトロン、G系とX系がデジタルとなります。オプティトロンメーターというのは初代セルシオから採用が始まったメーターで、指針なども自発光タイプとなる非常に高級感が高いものです。
デジタルメーターというのは、いわゆる液晶タイプのメーターとなります。デジタルメーターでも機能的には何ら問題はありませんが、メーターはつねに見ているものなので高級感のあるオプティトロンメーターに魅力を感じる人は多いのです。ハイブリッド車とガソリン車では表示する内容が異なりますので、それぞれ専用タイプとなっています。
●シート地
Z系:合成皮革+ツィード調ファブリック
G系:上級ファブリック
X系:ファブリック
●フロントシート
Z系:ヘッドレストセパレート型(運転席6ウェイパワー)
G系:ヘッドレストセパレート型
X系:ヘッドレスト一体型
●リヤシート
Z系:4/2/4分割可倒式ボトルホルダー2コ付き
G系:4/2/4分割可倒式ボトルホルダー2コ付き
X系:6/4分割可倒式
Z系のシートはコンビカラーとなり高級感があふれるものとなります。また、運転席のみですがパワーシートが装着されます。
しかし、このパワーシートがちょっと作動音が大きく、快適さが劣ります。このパワーシートならばマニュアルシートのほうがいいかな……という印象でした。
ヘッドレストがセパレートとなったほうがシートを目一杯リクライニングさせたときの自由度が高いという印象が経験的にあります。リヤシートはZ系とG系にセンターアームレストスルーが装備されます。アームレストスルーがあると長尺物を積んで4名乗車ができるほか、後席からラゲッジルームへ手が入れやすいのでラゲッジルームの荷物を取りたいなあ……などという時にも便利です。
●ステアリング
Z系:革巻き
G系:革巻き
X系:ウレタン
ヤリスは革巻きステアリングを採用するのが最上級のZ系のみですが、ヤリスクロスはZ系とG系で標準となっています。
じつはこのステアリングは、ステアリングホイール部分のみを交換することが可能で、部品として革巻きステアリングのホイール部分を取りよせて交換することが可能です。部品代が1万7000円程度、工賃込みで3万円掛からずにウレタンステアリングを革巻きステアリングにできるとのことです。
●エアコン
Z系:メッキダイヤル付きオート(ハイブリッドは電動インバーターコンプレッサー付き)
G系:メッキダイヤル付きオート(ハイブリッドは電動インバーターコンプレッサー付き)
X系:ダイヤル付きオート(ハイブリッドは電動インバーターコンプレッサー付き、1.5Xはマニュアルエアコン)
ガソリン1.5X以外はオートエアコンとなります。オートエアコンでもマニュアルモード付きなので、好きな吹き出し口から好きな温度のエアを出すことができます。オートエアコンは液晶パネル付きで少々ダイヤルが小さなタイプ、マニュアルエアコンは大きめのダイヤルが装備されます。
ハイブリッド用は電動インバーターコンプレッサー方式なので、アイドリングストップ時にもエアコンが停止することはありません。ガソリンエンジン車はアイドリングストップ機構を持ちません。
●ディスプレイオーディオ
Z系:8インチ+6スピーカー+DCM
G系:8インチ+6スピーカー+DCM
X系:7インチ+2スピーカー+DCM
●USB端子
Z系:通信用/充電用
G系:通信用/充電用
X系:通信用
ディスプレイオーディオは全車に標準装備されますが、Z系とG系は8インチ+6スピーカー、X系は7インチ+2スピーカーとなります。
全車DCM標準なので、オペレーターサービスやヘルプネット、スマホ操作によるエアコン作動などが可能。AppleCarPlayやAndroid Autoを使用してディスプレイ上にナビ画面を表示できるほか、Tコネクトナビの装着も可能。DCM通信料は初度登録から5年間無料となっています。
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