毎年発表される自動車盗難被害の実態を調べると、年々被害件数が減っている一方で、被害金額は高くなっているという。さらに既存のセキュリティシステムを突破するような新たな手口が次々に見つかるなど、警察と窃盗団とのいたちごっこが続いている。
そこで、愛車を守りたい我々として、さらに気になるのが、盗難された車両はいったいどういった方法で、どんな国へ運ばれるのか。今回は、いくつかのデータや証言から、自動車ライターの柳川洋氏がその実態を調査した。
文/柳川洋 写真/柳川洋、フォッケウルフ、トヨタ、メイン画像/Александр-Поташев-Stock.Adobe.com
■盗難件数は減ってはいるものの被害は高額化
新型コロナのせいもあって、「自動車泥棒」は大きく減った。2020年の全国の自動車盗難の認知件数は5210件と、2019年と比べて3割近く減少した。9年前と比べると、件数ベースではおよそ5分の1となり、犯人の逮捕率も1.7倍高まっている。
では、そろそろ警戒を緩めていいかというと、そんなことはない。愛知県警によると、愛知では2020年の6月で自動車盗難の件数は底打ち状態になったものの、2020年の1件当たりの被害額は約370万円と、なんと前年比で74万円も上昇しているという。
2021年8月には、レクサスやアルファード、ヴェルファイアなど、合計195台(未遂も含む)で約10億3000万円相当という巨額の窃盗容疑で、犯人グループが兵庫県警に逮捕された。
この事件では、「CANインベーダー」という機器が使われている。クルマのフロントバンパー近くにあるCANシステムのコネクターに「CANインベーダー」を接続することでシステムを乗っ取り、セキュリティ解除やエンジン始動を行うという新たな手口で、これが初の摘発事例となった。
このように自動車盗難の被害金額は高額化し、窃盗団の手口も進化し続けている。しかし、窃盗団がいざ盗難車両を売却するとなると、日本では登録制度や車検制度がしっかりしていて足がつきやすい。そのため、国内ではなく海外へ輸出されるケースが多いと言われている。では、盗まれた車両は世界のどんな国に売られていくのだろうか。
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