SUBARUの水平対向エンジンは果たして生き残れるのか!?

SUBARUの水平対向エンジンは果たして生き残れるのか!?

 アメリカでスバルの新型WRXが公開され、日本では今年11月下旬にもその日本仕様となる新型WRX S4がデビューする予定だ。今後、EVのSUVであるソルテラの登場でCAFE(企業平均燃費)対策を行うとみられるスバルだが、その真意はどこにあるのか、また2030年までに水平対向エンジンは販売されなくなってしまうのか、国沢光宏氏が検証する。

文/国沢光宏
写真/西尾タクト、スバル、STI

【画像ギャラリー】スバルのボクサーエンジンにKOは無い! しぶとく生き残る戦略に迫る!!


■スバルのエンジン戦略、地域戦略を斬る!

 ここにきてスバルが日本市場にもパワフルなエンジンを投入し始めた。新型BRZに搭載されているFA24は先代より大幅にパワーアップした235ps。そして275psを発生するFA24ターボも、新型WRX S4だけでなくレヴォーグへ追加搭載されるという。一方、我が国は2030年代半ばにエンジン搭載車の販売を終了するという動きもある。

新型WRXに搭載されるFA24ターボ。日本ではレヴォーグにも追加搭載予定である。スバルのメインマーケットである北米では6気筒エンジンに変わる主力エンジンとしてほぼすべての車種に搭載
新型WRXに搭載されるFA24ターボ。日本ではレヴォーグにも追加搭載予定である。スバルのメインマーケットである北米では6気筒エンジンに変わる主力エンジンとしてほぼすべての車種に搭載

 スバルのエンジン戦略はどうなっているのだろうか? さて、パワーユニットの行方に影響を与える要因を挙げるなら、燃費規制(CAFE=企業平均燃費)とカーボンフリーのふたつになる。前者についていえばエンジン車を販売しつつ、二酸化炭素を排出しない電気自動車の投入で平均燃費を向上させていけばよい。後者は電気自動車一択。

 もうひとつの要因がある。地域戦略だ。欧州市場に対応するとなれば、直近だと電気自動車+PHVの投入しか方法がない。アメリカ市場は緩く、最も厳しいカリフォルニア州+12州で2035年のエンジン搭載車新車販売を禁止する動きを見せているのみで、バイデンさんの大統領令も「2030年までは50%を電気自動車に」。半分はエンジン車でOK。

各国、地域の規制をにらみつつギリギリまでガソリンエンジンを販売する戦略

 そして我が国だけれど、欧州とアメリカの中間をイメージしていただければいい。2030年代半ばに新車でエンジン搭載車を買うことはできなくなるが、それまでの間についちゃ燃費規制をクリアできていれば自由。つまり、欧州のように電気自動車を販売しなければならないが、それによって平均燃費がよくなればエンジン搭載車を売ってもいい。

 このふたつを考えれば自動的にパワーユニット戦略は決まってくる。現在スバルにとってダントツの稼ぎ頭になっているアメリカ市場を見ると、すぐ電気自動車という流れになっていない。むしろ直近についていえばパワー競争という雰囲気。だからこそスバルは大半の車種にFA24ターボ搭載モデルをラインナップしている。

アメリカ専用車「アセント」。ランクル300にも匹敵するボディサイズのSUVだが、アメリカではミドルサイズの部類に入る。エンジンはもちろんFA24ターボを搭載
アメリカ専用車「アセント」。ランクル300にも匹敵するボディサイズのSUVだが、アメリカではミドルサイズの部類に入る。エンジンはもちろんFA24ターボを搭載

 アメリカも2050年くらいまでにはカーボンフリーなんだろうけれど、少なくとも今後10年くらい普通にFA24ターボを販売できると思う。EJ系のエンジンは1989年から30年間改良しながら使ってきた。FA24も改良を加えつつ(ハイブリッドにはならない)エンジン車販売禁止までスバルの主力エンジンになることだろう。

日本ではトヨタとの提携メリットを活かし新型ボクサーハイブリッドを開発?

 日本市場はどうか? スバルの動きを見ると、2022年にデビュー予定のソルテラ(電気自動車)の投入で平均燃費を向上させようとしている。なかなかの自信作らしく、長い航続距離だけでなく、エンジン車と比較できるようなコストパフォーマンスも持っているらしい。このクルマを日本と欧州で相当数売る計画なんだろう。

来年日本でも発売予定の「ソルテラ」。トヨタとの共同開発車で、かつスバル初のEV車となる。電動化では後発の部類に入ってしまうスバルにとって、是が非でも売りたい車両であろう
来年日本でも発売予定の「ソルテラ」。トヨタとの共同開発車で、かつスバル初のEV車となる。電動化では後発の部類に入ってしまうスバルにとって、是が非でも売りたい車両であろう

 とはいえソルテラだけだとCAFEのクリアは難しいと思う。そこで登場するのが、新開発フルハイブリッドのCB18と予想しておく。CB18のスペックを見ると、インプレッサや先代レヴォーグなどのFB型より圧倒的に前後超が短い。確保したスペースにCVTより少し大きいTHS(トヨタ式ハイブリッド)を組み込む。

 CB18エンジンを使う縦置き式のTHSですね。初搭載は2023年にもフルモデルチェンジされるインプレッサやXVになると思われる。このパワーユニット、電池搭載量を増やすことでPHVとすることが簡単にできてしまう。CB18のハイブリッドを出せば、電気自動車と合わせ日本の厳しいCAFEもクリアできる見通し。

「ソルテラ」に続く電動化車両として、CBエンジンにTHS-Ⅱを組み合わせたハイブリッド車を投入してくるであろうと予想。車種は2023年にフルモデルチェンジ予定のインプレッサやXVか?
「ソルテラ」に続く電動化車両として、CBエンジンにTHS-Ⅱを組み合わせたハイブリッド車を投入してくるであろうと予想。車種は2023年にフルモデルチェンジ予定のインプレッサやXVか?

 そのまま2030年代のエンジン車販売終了までFA24とCB18は残るに違いない。CAFEに余裕ができればレヴォーグやWRX S4だけでなく、アウトバックのようなモデルにもFA24ターボを搭載できるだろう。2030年代中盤以降、日本と欧州、そしてアメリカも電気自動車がメインになるが、これはトヨタとの提携で答えを見つけていくだろう。

 欧州市場は電気自動車とハイブリッド、PHVを混ぜながら欧州CAFEをクリアしていく。上記3つのパワーユニットさえあれば、世界中の規制に対応していける。オーストラリアやホンのわずかの台数ながら東南アジア、中国を含む新興国で売る場合も、FAエンジン群を含め幅広いパワーユニット戦略を展開できると思う。

環境対応も必要だが、WRCでかっ飛んでいるスバル車もまた見たい!!

 唯一の問題になってくるのがブランド戦略。古今東西、モータースポーツに対して果敢に切り込んでいかないかぎりブランドなど作れない。ということを何より知っているのがWRCのチャレンジで一躍世界のTOPブランドになったスバルである(忘れちゃってる?)。どのパワーユニットでモータースポーツに取り組むのか、残念ながらまったく見えてこない。

初代インプレッサのWRCでの大活躍以降、ラリーにおける一時代を築いた。いまもプライベーターで強さを誇るが、やはりWRCでかっ飛ぶ雄姿を再び目に、脳に焼き付けたい!!
初代インプレッサのWRCでの大活躍以降、ラリーにおける一時代を築いた。いまもプライベーターで強さを誇るが、やはりWRCでかっ飛ぶ雄姿を再び目に、脳に焼き付けたい!!

 ブランドイメージを作れなければ、どんなに万全なパワーユニット戦略を立ててもクルマは売れないと思う。その点、トヨタをしっかり見習ったほうがよい。
 唯一の希望が開発中と言われている新型WRX STIかもしれない。400ps超の
エンジンを作って搭載したらインパクトあります。とはいえスバルにはWRCが
似合うのではなかろうか。 

アメリカではすでに発表された新型WRX。レヴォーグから採用されているSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)+フルインナーフレーム構造により、走りも進化。このクルマをベースに待望のSTIも開発中とのことだ
アメリカではすでに発表された新型WRX。レヴォーグから採用されているSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)+フルインナーフレーム構造により、走りも進化。このクルマをベースに待望のSTIも開発中とのことだ

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