売れすぎなクルマ=ベストセラー車だが、そのベストセラー車といえども、重箱の隅を突くようで申し訳ないが、いまひとつな部分はあるのだろうか? いやあるはずだ!
ということで、ホンダN-BOX、スズキスペーシア、日産ノート、トヨタヤリス、カローラクロスの5台をピックアップし、いまひとつな欠点を、重箱の隅を突くようにモータージャーナリストの渡辺陽一郎氏に挙げてもらった。
文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スバル、三菱、ダイハツ、スズキ
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■ホンダN-BOXのいまひとつな欠点→マイルドHVがない、シートの座り心地が悪く、電動パーキングブレーキがない
●2021年1~9月の1ヵ月の平均月販台数:約1万7000台
絶好調に売れているクルマでも、欠点はある。そこを指摘してみたい。まずはホンダN-BOXだ。今は国内販売の1位はトヨタヤリスとされるが、日本自動車販売協会連合会が公表する数字には、コンパクトカーのヤリスに加えて、SUVのヤリスクロス、スポーツモデルのGRヤリスも含まれる。ヤリスシリーズの合計台数だ。
そしてヤリスとヤリスクロスは外観が大幅に異なり、一般的にも違うクルマと認識されている。そこで登録台数を分割すると、2021年1~9月の1ヵ月平均は、ヤリスが9100台でヤリスクロスは9200台だ。N-BOXは1万7000台だから、ヤリスとヤリスクロスを大幅に上まわり、実質的に日本のベストセラーになる。
販売が好調な理由は、前輪駆動をベースにした軽自動車では居住空間が最も広く、内装もコンパクトカーと同等か、それ以上に上質なことだ。さらに燃料タンクを前席の下に搭載したから荷室も広く、自転車も簡単に積める。実用性は高いが、欠点も散見される。
居住空間については小柄なドライバーが運転席に座ると、圧迫感が生じる場合がある。メーターは高い位置に装着されて見やすいが、その分だけ前方の視界が悪化するからだ。
収納設備はひと通りそろうが、スペーシアなどに比べるとフタの付いたボックスや引き出しは少ない。トレイが目立つ。
後席の頭上と足元の空間は広いが、座り心地は、現行型で柔軟性を強めたタントに見劣りする。大腿部のサポート性を含めて向上させる余地がある。
車両重量は標準ボディのLでも900kgと重い。全高が1700mmを超える軽自動車では、動力性能は平均水準だが、コンパクトカーに比べるとパワー不足だ。
解決方法としてはターボを選ぶ。最大トルクはNAエンジンの1.6倍に増強され、発生回転数は2600回転と低いから、1Lエンジンを積んでいる感覚で運転できる。WLTCモード燃費の悪化率は5%と小さく、ターボは効率が優れている。
しかもLとLターボの価格を比べると、後者が約20万円高いが、装備も充実する。Lターボには、Lでオプションのサイド&カーテンエアバッグと右側スライドドアの電動機能を標準装着した。
パドルシフトなども加わるので、これらの価格換算額を差し引いたターボの正味価格は7万円だ。N-BOXに限らず、背の高い軽自動車ではパワー不足が大きな欠点だが、ターボを選ぶと割安な出費で解消できる。
このほかN-BOXは、カーブを曲がったり、車線を変える時などにボディがほかの車種よりも大きめに傾く。後輪の接地性が優れているから安定性は確保されるが、タントやスペーシアに比べると、峠道などでは少し曲がりにくい。
メカニズムや装備については、マイルドハイブリッドが設定されていない。また車間距離を自動制御できるクルーズコントロールを採用したが、パーキングブレーキが電動式ではないため、車速が時速25km未満まで下がると制御が解除される。全車速追従型になっていない。
細かいところでは2020年11月のマイナーチェンジで要望が多かった電動パーキングブレーキが装着されなかった。
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