トヨタの最上級ラグジュアリーミニバン「ヴェルファイア」の販売が大ブレーキ状態にある。今年1~9月の登録累計は5953台、月平均661台で、前年同期に比べて58.9%もの大幅なマイナス。2021年8月はまさかの298台で前年同月比24.3%、9月は若干上向くも405台、前年同月比68.2%減と、マイナス傾向が加速。
登録乗用車ブランド通称名別順位ではベスト50位から姿を消している。ほんの2~3年前までは月販7000台以上をコンスタントに売り、同クラスミニバンのトップセラーに君臨していたヴェルファイアが、いまや全ミニバンでも屈指の低空飛行である。
ヴェルファイアに何が起きているのか。流通ジャーナリストの遠藤徹氏に現場の声を集めていただいた。
文/遠藤徹
【画像ギャラリー】トヨタの最上級ミニバン「ヴェルファイア」と「アルファード」を画像でチェック(16枚)画像ギャラリー■ヴェルファイア急落の理由とは
ヴェルファイアの月販台数急落の理由は、言うまでもなく姉妹車アルファードの台頭にある。
こちらは同期間である1~9月の登録累計が7万9669台、月平均8852台、前年同期比127.3%と増加傾向が継続中。モデルが古くなっているにも関わらず、登録車販売ランキングは4位である。高額車でこの成績は驚異的。
ヴェルファイアの販売が大幅に後退したのは、2017年12月に実施したマイナーチェンジがきっかけである。それまでヴェルファイアのフロントマスクは若者受けのする、押し出しの強い個性的なデザインを採用していた。
これをマイナーチェンジを機会におとなしめの顔立ちとした。いっぽう姉妹車のアルファードは逆に、若者受けをする派手なマスクに仕立てたのである。これによって以降はヴェルファイアが売れなくなり、アルファードがリードするようになった。
両車の販売格差の要因はまだある。
2021年4月28日の一部改良ではヴェルファイアのラインアップを大幅に絞り、グレード構成は特別仕様車だった「ゴールデンアイスII」のみとしたのに対し、アルファードは従来どおりカタログモデルと特別仕様車のワイドバリエーション態勢をキープした。
またそれ以前の2020年5月には、それまでヴェルファイアがネッツ店、アルファードがトヨペット店の専売だったのを両モデルともトヨタ全系列店併売態勢としたことで、両モデルの販売格差がますます拡大することになった。
トヨタの商品戦略の路線変更も大きく影響している。トヨタは2017年時点でそれまで約60車種あった国内向け車種を、2025年までに半分の約30車種に削減する方針を公表し、最近までに多くのモデルを廃止としている。その廃止手法の代表格は、姉妹車の1本化ないしは統合である。
ざっくり言えば、アルファード/ヴェルファイアはアルファードに1本化し、ヴェルファイアは生産中止する案がほぼ確実となっている。
その方向性のひとつとして、ヴェルファイアは特別仕様車のみの設定とし、「よりヴェルファイアらしさを求めるユーザーのみが買うモデル」に仕立てた。
その方向性が濃厚になれば、一般的なユーザーはアルファードへの集中度が高まり、ヴェルファイアを敬遠するようになっている。最近はカタログもオプション用品を含めてアルファード/ヴェルファイアを統合し、1冊にまとめられている。その内容は、アルファードの商品説明に大きくさき、ヴェルファイアは巻末に僅かなページにまとめられている。こうしたことからもますますヴェルファイアの影が薄くなっている状況にある。
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