主要幹線道路や国道沿いには、多くのカーディーラーが軒を連ねる。ドライブしていると、国産ディーラーや輸入車ディーラー、中古車販売店などが密集している地域に遭遇することはないだろうか。
自動車ディーラーが塊となって群生するのには理由がある。その理由を明らかにするとともに、隣接するお店同士の関係性など販売店の裏事情を、長年自動車販売の現場に従事してきた筆者がお伝えしていく。
文/佐々木 亘、写真/TOYOTA、HONDA、NISSAN、Adobe Stock(トビラ写真=aijiro@Adobe Stock)
■ディーラーの隣にディーラーを作る理由
皆さんが利用する自動車ディーラーは、どのようなところにあるだろうか。住宅地の中や、自然豊かな公園の近くなどには立っていないと思う。自動車ディーラーは、住んでいる地域の主要な幹線道路沿いや、ショッピングモールなどが立ち並ぶ商圏にあるはずだ。
幹線道路沿いにディーラーを立てる理由の一つとしては、輸送のしやすさが挙げられる。新車や中古車、さらには整備用の部品は、毎日ディーラーに届けられているのだ。大きな道路沿いにお店を立てることで、クルマや部品の輸送がやりやすくなる。
また、自動車ディーラーを建設できる地域は限られている。現在ほとんどのディーラーは、ショールームと整備工場を併設しているはずだ。整備工場を建設できる土地は限られている(住宅専用地域には整備工場付きのディーラーは建設できない)ので、自ずとディーラーが密集する構図が出来上がる。
販売店の密集は、集客力を大きくする効果があり、これは競合のメリットよりもはるかに大きなものだ。同じような手法で集客力を高める業態は多く、銀行や紳士服店、ショッピングモールなどが例として挙げられる。
先に挙げた輸送の観点からも、販売店が密集しているほうが、輸送コストを下げやすく、効率的にクルマや部品を運ぶことができるだろう。
販売店が密集して建設される理由には、地理(土地の用途)、コスト、商売のやりやすさといった、様々な要素が入り組んでいるのだ。
■隣同士のディーラーは、どんなお付き合いになるのか
では、お隣同士のディーラーは、どのような関係性で共存しているのか見ていこう。
基本的な感覚は、マンションやアパートのお隣さんのような感じだ。付かず離れず、適度な距離感を保った状態で交流している。
例えば、どのようなイベントをいつ開くといった情報は、ある程度交換するし、商売のしやすさ、ユーザーのクセなどについて情報交換をすることもしばしばだ。
お隣同士で長い間付き合っているお店が多く、ご近所づきあいは結構活発である。ただし、プライベートで飲みに行くまでは仲良くない。どの程度の関係性なのかを、想像できただろうか。
また、新店をオープンする場合には、元々いた近隣のお店へのあいさつ回りは欠かせない。商圏内でつまはじきにされないように、仲間として認めてもらうことが必要になってくる。
昔、筆者が勤務していた販売店の隣に、高級輸入車ディーラーが建設された時には、輸入車ディーラーの事業責任者の方とお店の店長が、高級菓子折りをもって挨拶に来ていた。メーカーが違っても、同じ商圏で商売をする者同士で、昔の商店街のようなお付き合いが行われているのだ。
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