車名別の販売台数ランキングの上位は、コンパクトカーや軽自動車、SUVに占められており、かつてのファミリーカーの定番だったセダンは人気を落としてしまっている。
とはいえ、重心の低さやボディ剛性では有利なセダンは根強いファンを持ち、メーカーは魅力的なセダンを作り続けている。
今回は渡辺陽一郎氏に現行車の魅力的なセダンを紹介してもらった!
文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部
■人気は低調だが魅力はじゅうぶんの国内セダン事情
セダンはかつて売れ筋のカテゴリーだったが、1990年代の中盤以降は登録台数を下降させた。
ミニバンが急速に普及してファミリーカーの主役になり、コンパクトカーや軽自動車も、居住性、質感、走行性能、乗り心地などを向上させたからだ。近年ではSUVの人気も高まり、セダンは古いカテゴリーと見られるようになってユーザーを奪われた。
国内の販売状況をカテゴリー別に見ると、今は軽自動車が37%を占める。次に多いコンパクトカーも25%に達する。SUVとミニバンはそれぞれ各13%程度を占めるため、セダンやワゴンの比率は合計しても約10%だ。
レクサスを含めて、セダンの選択肢は相応に用意されるが、各車種の登録台数は少ない。例えばカローラシリーズの場合、ワゴンのカローラツーリングは、2021年1~10月の1か月平均登録台数が約3300台になる。ところがセダンは約1300台に留まる。
セダンで登録台数の最も多い車種は、上級モデルのクラウンだ。それでも2021年1~10月の1か月平均登録台数は約1900台。アルファードの8400台、ハリアーの6700台に比べると、価格帯は同等なのにクラウンは圧倒的に少ない。
このようにセダンの売れ行きは低調だが、魅力まで失ったわけではない。セダンはアルファードのようなミニバン、ハリアーのようなSUVに比べると天井が低く、重心高も抑えられている。後席とトランクスペースの間には、骨格や隔壁があり、ボディ剛性を高めやすい。
そしてセダンの低重心で高剛性のボディは、危険の回避を含めて、走行安定性と乗り心地を高い水準で両立させる。後席とトランクスペースが分離されているから、後輪のロードノイズ(タイヤが路上を転がる時に発する音)も伝わりにくく、上質な運転感覚を得やすい。
つまりセダンは、安心と快適を向上させる上で有利なボディ形状だ。そのためにメルセデスベンツやBMWなどの欧州車には、今でもセダンが豊富に用意される。欧州では高速走行の機会が多く、安全性を高める目的で、優れた走行安定性とドライバーの疲労を抑える快適な乗り心地が重視されるからだ。
今は衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能に対するユーザーの関心が高く、安全性と快適性の優れたセダンは、その期待に応えやすい。メーカーには、セダンを積極的に訴求する余地があり、諦めるのはまだ早い。
以上のような事情を踏まえて、推奨度の高いセダンを考えてみたい。
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