これは、日産が”軌道に乗った証”なのだろうか?
日産は2021年11月29日、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表した。次の10年を見据えて、日産がこれから歩もうとしている道筋を見せたかたちだ。
内田誠CEOは「Nissan Nextによる企業再生は着実に進んでいる。いまこそ、未来の創造に向けてギアをシフトする時期だ」と今回の発表の主旨を示した。
就任した2年前、日産は長年に渡るゴーン体制下での「過去の過ち」(内田CEO)を抱え、日産としての事業全体が先行きが不透明な状況だった。そうした日産を根本的に見直すのが、事業再生計画の「Nissan Next」であり、現在はその最終章に入ろうとしている段階だと主張する。
新型車についても、「日産はフルモデルチェンジまでの車齢が長過ぎる」という販売店やユーザーからの不満の声を解消するため、「Nissan Next」では、18カ月で12車種の市場導入を確約した。
日本市場向けでは、「ノートe-POWER」「アリア」、そして「フェアレディZ」など日産のアイコンとなる主力車種が続々とお披露目されてきた。また、SUVではアメリカで「ローグ」として先行発売され、2022年には「エクストレイル」として登場が期待されている。搭載されるのは、中国で発表された発電機として使うエンジンにターボチャージャーを装着する通称「e-POWERターボ」になるのだろうか?
さらに、「Nissan Ambition 2030」では、2030年度までにEV(電気自動車)15車種を含む23車種の新型電動車を市場導入することを明らかにした。Nissan Nextの次へと向かう日産に勝ち目があるのか、様々な角度から考えてみたい。
文/桃田健史、写真/NISSAN
【画像ギャラリー】ワクワクする日産の新型車と新たに発表されたコンセプトカーをチェック!!(28枚)画像ギャラリーNissan Ambition 2030の中身
では、今回の発表内容の振り返りから話を進める。
大前提として、「Nissan Ambition2030は、中期経営計画ではない」(内田CEO)。あくまでも、日産が事業再生期から再成長期に向かうための「羅針盤」だという。社員にとって、販売店にとって、部品メーカーなどパートナー企業にとって、そして当然ながらユーザーに対して、日産がこれから歩もうとしている道筋を示すものなのだ。そんな「Nissan Ambition 2030」を描くうえで、自動車産業に関わる「社会の3つの変化」を考慮した。
ひとつ目の変化は、気候変動だ。直近では、COP26(第26回気候変動枠組条約締結国会議:2021年10月31日~11月12日、於:英国グラスゴー)で示されたように、地球温暖化に対する社会活動の変化はグローバルで待ったなしの状態になっている、という見方が強い。自動車産業界における主要な解決策がパワートレインの電動化と、製造工場での再生可能エネルギー利用などによるグリーン化だ。
ふたつ目の変化は、交通に関わる社会課題が挙げられる。グローバルで今後、先進国のみならず新興国でも大都市への人口集中がさらに続くと考えられている。それにより地方部の過疎化が進み、公共交通の維持が難しくなり、高齢者の移動手段に対する課題が浮き彫りになってきている。
解決のために、AI(人工知能)を活用した交通データの解析について研究開発が進んでいる段階だ。クルマが個人所有物としての商品という枠組みを超え、社会インフラの一部という認識が高まっている。
3つ目は、ユーザーのクルマに対する意識の変化だ。社会全体で環境問題に対する関心が高まり、またライフスタイルに対する考え方が多様化するなかで、クルマの商品企画に与える影響は極めて大きい。
コメント
コメントの使い方