伝統のクラウンに「マジェスタ」の名が追加されたのは1991年のこと。セルシオとクラウンの間に位置するクルマとして生まれ、セルシオ消滅後には、トヨタドライバーズカーの頂点に君臨したモデルである。
本稿では、約17年間6代に渡るクラウンマジェスタの歴史を振り返りながら、筆者の販売経験を踏まえて、マジェスタの革新モデルを1つ選んでいきたい。日本の高級車は、クラウンマジェスタで極まる。
文/佐々木 亘、写真/TOYOTA
■ロングボディに縦型テールランプ、マジェスタを印象付ける数々のデザイン
クラウンマジェスタという存在は、非常に通好みだと思う。
フロントマスクだけを比べれば、当時の「ロイヤルサルーン」と「マジェスタ」の違いは、非常に分かりにくい。細かく見ればグリルやランプが少々違うが、クルマにあまり詳しくないという人には、ロイヤルもマジェスタも同じように見えるのではないだろうか。
普通に見比べたら大差ないクルマが、ロイヤルよりも100万円以上高く販売されている。この事実だけで、トヨタが作り上げたマジェスタというブランドが、いかに崇高なものかを感じ取ることができるはずだ。
クラウンよりもホイールベースを拡大し、後席スペースを広くする。デザインの大きな違いをリアに集めているのも粋な演出だ。
マジェスタの代名詞は、2代目から採用された縦型の独創的なテールランプであるだろう。オーナーが運転席のドアを開ける際に後方から回り込み、「マジェスタ」であることを確認してから乗り込むことができるこの演出に、筆者はマジェスタらしさを強く感じる。
■マジェスタはクラウンのシリーズなのか、それとも独立車種か
クラウンマジェスタなのか、マジェスタなのか、様々な箇所で意見の分かれる所であろう。
公式には「クラウンマジェスタ」なのだが、販売現場にいると、クラウンという呼び名はあまり使われず、マジェスタと単独呼びすることが多かった。マジェスタオーナーたちの前でも「クラウンマジェスタ」というより「マジェスタ」と呼んだほうが喜んでくれる。
2004年発表の4代目から、マジェスタが独立車種としての道をしっかりと歩き出したと筆者は思う。フロントエンブレムにはクラウンの王冠ではなく、トヨタのCIが付けられ、エレクトロマルチビジョンの車名も「MAJESTA」になった。この流れは2009年発表の5代目まで継続する。
最後にマジェスタの名が付いた6代目は、クラウンの一つのシリーズとして位置づけられ、独立車種の立場を失った。同時にマジェスタの威厳も小さくなり、結果としてこの代でマジェスタの名前は消えることとなる。
販売する立場で言えば、クラウンとマジェスタは全くの別物だ。売り手の感覚では、マジェスタには独立車種でいてもらったほうが、クルマの収まり場所も良かった。クラウンの枠を飛び出してマジェスタが独り歩きしたほうが、面白い未来があったように思う。
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