ヤリスが、登録台数21万2927台を達し、2021年に国内で最も売られたクルマとなった。この登録台数にはヤリスに加えて、ヤリスクロス、GRヤリスの分も含まれる。別々に算出すると、ヤリスクロスがヤリスよりも少し多く登録されていることが分かった(詳細は本文にて後述)。
そこで、本稿ではヤリスクロスがなぜここまで売れたのかについてさまざまな視点から解説する。ヤリス、カローラといった車名を冠するシリーズ化の真意についても考察する。
文/渡辺陽一郎、写真/TOYOTA
【画像ギャラリー】シリーズ化でイメージアップ!! ヤリスシリーズとカローラシリーズをすべて見る(42枚)画像ギャラリーヤリスクロスがヤリスよりも多く売れた理由とは何か
2021年に国内で最も多く売られたクルマはヤリスだ。2021年の登録台数は21万2927台で、1カ月平均にすれば1万7744台に達した。
ただしヤリスの登録台数には、コンパクトカーのヤリスに加えて、コンパクトSUVのヤリスクロス、スポーツモデルのGRヤリスも含まれる。登録台数を別々に算出すると、ヤリスは10万1460台(1カ月平均は8455台)、ヤリスクロスは10万4000台(1カ月平均は8667台)であった。その残りがGRヤリスになる。
注目されるのは、ヤリスクロスがヤリスよりも少し多く登録され、ヤリスシリーズ全体の約半数を占めたことだ。今はSUVの人気が高く、ヤリスクロスにはハイブリッドも設定されるため、売れ行きを伸ばした。ヤリスクロスの登録台数のうち、約70%をハイブリッドが占める。
いっぽう、ヤリスにもハイブリッドはあるが、その比率はヤリス全体の45%に留まる。ヤリスのノーマルエンジンには、1Lと1.5Lの2種類があり、さらにトヨタにはコンパクトなハイブリッド専用車のアクアもあるから、ヤリスのハイブリッドは売れ行きが少ない。これがヤリスクロスとの販売格差にも繋がった。
アクアは、ヤリスハイブリッドと基本部分を共通化しながら、動力性能には少し余裕あり、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の拡大によって後席も広い。装備を充実させて価格は割安だから、身内なのにヤリスハイブリッドの強敵になっている。
つまりハイブリッドならアクアが買い得で、ノーマルエンジンはヤリスという選び分けが成り立つ。そのためにヤリスは、少なからずユーザーを奪われた。
ヤリスクロスに話を戻すと商品力も高い。外観は鋭角的で、全幅は1765mmと少しワイドだから、視覚的な安定感も伴う。全高も1590mmと高く、存在感も強い。そのいっぽうで全長は4180mmに収まり、最小回転半径も5.3mだから、小回りの利きは良好だ。混雑した街中や駐車場でも運転しやすい。
ヤリスクロスの前後席の乗員間隔はヤリスと同じだから、後席の足元空間は狭めだが、全高が90mm高いために頭上空間には余裕がある。床と座面の間隔も20mm増しており、ヤリスに比べると腰が落ち込んで膝の持ち上がる着座姿勢になりにくい。
さらにヤリスクロスは、荷室容量にも余裕がある。後席を使っているときの荷室長(荷室の奥行寸法)は、ヤリスは630mmだが、ヤリスクロスは820mmだ。荷室幅もヤリスは1000mmだが、全幅をワイド化したヤリスクロスは、荷室形状の違いもあって1400mmに達する。そのためにコンパクトカーのヤリスでは、後席と荷室が少し狭いと感じたとき、ヤリスクロスはちょうど良い選択肢になる。
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