ヤリスクロス 残価設定ローンの返済額&リセールバリューでも良し!!
そして今は残価設定ローンを利用するユーザーが増えており、この返済額でもヤリスクロスは有利だ。
具体的に計算すると、直列3気筒1.5Lノーマルガソリンエンジンを搭載するヤリスクロスZの価格は221万円になる。同じ1.5Lノーマルエンジンを搭載するヤリスZに、アルミホイールをオプション装着してヤリスクロスZと装備水準を合わせると、合計額は205万3500円だ。両車の価格を比べると、ヤリスクロスZは、アルミホイールをオプション装着したヤリスZに比べて15万6500円高い。
ところがこの2車種で3年間の残価設定ローン(頭金のない均等払い)を組むと、ヤリスクロスZの月々の返済額は4万100円、ヤリスZは4万4000円だ。ヤリスクロスZの価格は、アルミホイールをオプション装着したヤリスZよりも15万6500円高いのに、残価設定ローンの月々の返済額は3900円安くなる。
この逆転現象が生じた一番の理由は、残価の違いだ。ヤリスクロスZの3年後の残価(残存価値)は、新車価格の52%だが、ヤリスZは41%と低い。
残価設定ローンでは、残価を除いた金額を分割返済するから、ヤリスクロスZは3年間に残価の52%を差し引いた48%を支払う。対するヤリスZは、残価が41%だから59%を支払わねばならない。そのためにヤリスクロスZは、ヤリスZよりも価格が高いのに、返済額は少なく抑えられる。
最終的に残価を支払って車両を買い取る場合は、ヤリスクロスは残価が高いから損得勘定は同等になるが、返済を終えて車両を返却するなら、残価は支払わない。従って残価の高いヤリスクロスがトクをする。
ヤリスZよりもヤリスクロスZの残価が高い理由は、数年後の中古車市場において、高値で売却できると予想されるからだ。コンパクトSUVのヤリスクロスは人気が高く、ヤリスよりもリセールバリューが優れているから、残価も高まって残価設定ローンの返済額は安くなる。従って残価設定ローンを利用するなら、断然ヤリスクロスが推奨される。
このようなさまざまな理由により、ヤリスクロスの販売は好調で、ヤリス全体の登録台数も押し上げた。そしてヤリスのようにシリーズ化して売れ行きを増やしている車種は、ほかにもみられる。
人気車の車名を冠するシリーズ化の真意とは
2021年に小型/普通車の販売ランキングでヤリスとルーミーに続く3位に入ったカローラは、シリーズ化の典型だ。カローラセダン、ワゴンのカローラツーリング、5ドアハッチバックのカローラスポーツ、SUVのカローラクロス、継続生産される5ナンバーセダンのカローラアクシオ、5ナンバーワゴンのカローラフィルダーを合計して、2021年には11万865台が登録された。
カローラクロスは2021年9月に登場したので、2021年1~12月で計算すると正確な販売比率を算出できない。そこで直近の2022年1月の登録台数で計算すると、カローラシリーズ全体の59%をカローラクロスが占めた。次に多いのはカローラツーリングの18%だ。この2車種を合計すると、2022年1月に販売されたカローラシリーズの77%になり、ほかの車種は残りの23%に収まってしまう。
このほかノートも、ノート+ノートオーテック+ノートオーラ+ノートオーラニスモを合計した登録台数になる。プリウスとRAV4には、それぞれPHVも含まれる。
軽自動車では、ムーヴにはムーヴキャンバス、ワゴンRにはワゴンRスマイル、アルトにはアルトラパン、ミラにはミライースとミラトコットの届け出台数が含まれ、今は「ミラ」という車種は用意されていない。
以上のようなシリーズ化が行われる一番の理由は、車種のイメージが分かりやすいからだ。欧州には以前からコンパクトカーのヤリス(日本名はヴィッツ)が用意され、そのエンジンやプラットフォームを使うコンパクトSUVを追加したなら、車名をヤリスクロスとした方が分かりやすい。
ノートオーラも、CMでは「オーラ」と表現しているが、全幅をワイド化しながら外観の見え方はノートに近い。ノートの車名を冠してノートオーラとした方が、車両のイメージも沸きやすい。デザイン面では、ノートでやりたかったことを3ナンバー車のノートオーラでさらに突き詰めた経緯もあり、ノートのシリーズに含めた。
ワゴンRスマイルでは、開発者は次のように述べた。「ワゴンRのお客様にスライドドアのニーズを尋ねたら、約40%の方が、ワゴンRのスライドドア装着車が欲しいと返答された。そこでワゴンRスマイルを開発した」。今はスライドドアの人気が高く「スライドドアの付いたワゴンR」にすることが大切なのだ。
このように既存の人気車の車名を冠してシリーズ化する理由は、主に車種のイメージの沸きやすさにある。さらに販売ランキングも理由のひとつだ。ランキング順位に「ヤリスクロス」の車名は出てこなくても、「ヤリスがN-BOXを抜いて国内販売の1位!」と報道されると、イメージアップに貢献できる。
N-BOXは2021年に18万8940台を届け出したから、ヤリスとヤリスクロスを分割すればN-BOXが国内販売の1位だが、それではトヨタの訴求力が弱まる。そこでヤリスとヤリスクロスを合計して国内販売1位を獲得した。
また日産の商品企画担当者は「ノートシリーズ全体で、アクアの登録台数を上まわりたい。そうすればハイブリッド車の登録台数ナンバーワンになれる」という。
このような1位争いは滑稽に思えるが、当事者は真剣だ。最近のクルマは、走行性能、居住性、価格などが均質化して、デザインも似てきた。以前に比べて車種ごとの差が付きにくく、ユーザーが選択に迷うことも多い。この時に「販売ナンバーワン」の称号が説得力を発揮して、「人気の高い方を選ぼう」と判断される。
車種のシリーズ化には、メーカーや販売会社のさまざまな戦略や思いが込められ、今のクルマ界の実情を反映させているわけだ。
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