メルセデスベンツがF1で培った技術も投入したコンセプトカー「EQXX」を発表した。各部を徹底的に突き詰めて、空気抵抗係数0.17、マグネシウムなどを使用して徹底的に軽量化したシャシーなど、コンセプトカーならではの技術のデパート状態となっている。
もちろん高額なものになるので、どこまで市販車に落とし込まれるかは不明だが、メルセデスベンツが目指す高級車のEVはこうだ……という提案だと考えられる。
今回はこのEQXXが技術的にどう凄いのかということだけでなく、世の中EVの航続距離は多いほうがいいという流れにあるが、価格と航続距離の折り合いをどうつけるべきとメーカー(日欧米問わず)が考えているのか? 長距離を走れるEVが本当に21世紀に求められるエコなのか? ということについても考察していきたい。
文/御堀直嗣
写真/Mercedes-Benz
■メルセデスベンツの次代への挑戦する姿を示したEQXX
メルセデスベンツは、年明けに、ドイツで電気自動車(EV)の将来ビジョンを発表した。「EQXX」と名付けられた構想は、EV時代を迎え、その将来像をより明らかにし、そこへ向けて挑戦していく姿を明確に示したといえる。
具体的な諸元は、100kWh(キロ・ワット・アワー)のバッテリー容量で一充電走行距離1000kmを目指す。それだけの大容量バッテリーを車載しながら、車両重量は1750kgに収める。モーターの最高出力は150kW(約204馬力)だ。
驚くべきは空力性能で、空気抵抗係数Cd値0.17である。いかにも高速走行を前提とするドイツ車ならではの空力数値だ。ちなみに、アウディの「e-tron GT」のCd値は0.24である。
EQXXの写真をみると、流れるような外観の造形でクーペのような姿だが、それでも4ドアである。欧州には4ドアセダンの価値が変わらず残されており、もちろんメルセデスベンツのフラッグシップはSクラスやマイバッハであるから、将来を見据えた概念を示す車種でも4ドアであることは重要なのだろう。
そして、EQXXの姿をみて思い出すのは、2010年にフォルクスワーゲンが挑戦した1リッターカーと呼ばれた「XL1」というクルマだ。
燃料1リッターで100kmを走れる性能を1L/100kmと燃費表示し、このため「1リッターカー」と欧州では呼ばれる。VWのXL1も、ドイツ車らしく高速走行での空力性能を求めるためクーペのような外観の造形で、Cd値は0.186だった。動力は、ディーゼルプラグインハイブリッドである。
話がややそれたが、メルセデスベンツがEQXXを構想した背景として語るのは、クルマでの旅という価値の存続だ。アウトバーンを含め道路網が整備された欧州ではとくに、クルマで自由に移動することが普遍的価値となっている。
もちろん、飛行機や鉄道といった長旅の手段はあるが、クルマでの自由な移動に対する根強い要求がなおある。それを、EV時代にも実現するという意志がEQXXに込められている。そこに、技術的挑戦の具体像も明らかになってくる。
また、一充電で1000km走行できるクルマ側の性能目標が明らかになれば、充電網という社会基盤側の整備計画も具体像を増していく。
急速充電器の性能や、設置の充実はもちろんだが、旅先での普通充電の価値も改めて見直され、目的地充電として仕事先や宿泊先などの施設に対し、どのように対処すべきかの指針が具体的になっていくはずだ。
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