今年(2022年)7月に50周年の節目を迎える「シビック」は、世界中のファンを魅了し続けている。
1972年7月、ホンダから世界戦略車「シビック」が発売。これまでに11世代のシビックが誕生し、1997年にはスポーツモデル「タイプR」が追加投入された。いっぽう、国内市場では、2010年の8代目シビック販売終了を機に撤退。その後、2017年7月に10代目シビックとして復活を遂げた。
2021年にはフルモデルチェンジが行われ、現行型(11代目)シビックが発売。北米では、2022カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。50周年を迎える2022年7月には、e:HEVモデルが発売されることが決まった。
そこで本稿では、歴代シビックのなかから厳選3台をセレクトし、それぞれの魅力を語る。
文/片岡英明、写真/HONDA
【画像ギャラリー】50周年を迎えるホンダシビックの歴代モデルを画像で振り返る!!(15枚)画像ギャラリー50周年を迎えるホンダシビックはどのようなクルマなのか
ホンダを代表するファミリーカーが「シビック」である。CIVICは、そのネーミングから分かるように、市民、庶民のために送り出した新感覚のベーシックカーだ。1972年7月に世界戦略車として鮮烈なデビューを飾り、その成功によって世界にホンダの名声は知れ渡った。アコードとともにホンダの屋台骨を支えているシビックは、2022年に誕生から50年の節目を迎えている。
半世紀の間に11の世代のシビックが誕生し、世界中にファンを増やしていった。日本ではラインナップを4ドアセダンだけに絞った8代目を最後に、2010年9月に販売を休止。シビックの歴史は途切れている。だが、2015年に限定発売ながら「タイプR」を復活させ、再びタスキを繋いだ。そして2017年9月、日本市場に10代目シビックでカムバックし、話題をさらった。
現行モデルは11代目だ。2021年夏に日本市場への導入が発表され、4ドアセダンと5ドアハッチバックを設定している。1.5Lの直列4気筒DOHC直噴ターボだけでスタートした。だが、2022年4月にハイブリッド車のe:HEVを追加投入すると発表している。余裕ある2LのDOHC直噴エンジンに2つのモーターを組み合わせ、走りの実力も高いというから正式発売が楽しみだ。
50年の歴史のなかでエポックを画したシビックを3台選ぶのはなかなか難しい。いずれも個性的で魅力的だからだ。だから15年ほどの間隔をあけて、その時期に強烈な印象を残したシビックを選ぶことにした。
魅力的な歴代シビックのなかから選ばれたモデルはどれ?
50年の歴史のなかで最高の傑作と多くの人があげるのは、1972年に登場した初代モデルだろう。今につながるホンダの先進的なイメージを築いただけでなく、地球にやさしいファミリーカーの時代の扉をも開いた。
シビックは、時代に先駆けて前輪駆動のFF方式と台形フォルムの2BOXデザインを採用し、パッケージングに革命を起こしている。ボディは当時の軽自動車より少し大きいだけだ。だが、コンパクトサイズでありながらメカニズム部分を最小に抑え、広くて快適なキャビンを実現した。
最初に独立したトランクを備えた2ドアモデルが発売され、2カ月後の9月にリアにハッチゲートを備えた3ドアモデルを加えている。リアワイパーも日本で最初に採用している。
このジャンルの代表と言われるVWゴルフよりデビューは2年も早かったのだ。初代シビックの先見性の高さが光っていたといえるだろう。
メカニズムにも見るべきところが多い。パワーユニットは軽量コンパクト設計の1.2L直列4気筒SOHCだ。60年代のホンダはパワー至上主義だったが、シビックは最高出力を意識して抑え、扱いやすさに重きを置いている。
しかも4速MTの設定に続き、途中でホンダマチックと名付けたスターレンジ付き2段セミATを追加し、ファン層を広げた。当時はミドルクラスでさえ4速MTが主役の時代だ。ATは上級クラスだけのものと考えられていたが、その定説を覆し、普及させた。
もう1つの偉業は、1973年12月にホイールベースを延ばした4ドアの1500シリーズを設定したときに始まる。このファミリーカーに副燃焼室を備えた複合渦流調速燃焼のクリーンなCVCCエンジンを搭載し、発売した。
実現不可能と言われた排ガス規制(マスキー法)を、シビックCVCCは世界で最初にクリアし、世界中のエンジニアと経営者を驚かせている。その反響はすごかった。内外の自動車メーカーの首脳陣は、こぞって技術供与の話をするためにホンダを訪れたのだ。CVCCエンジンを主役とした初代シビックは大ヒットし、1975年にはCVCCエンジン搭載車だけで19万台あまりが北米に輸出されている。
90年代、平成の時代になってからの傑作は、1991年9月にセンセーショナルなデビューを飾った5代目の「スポーツシビック」だ。ボディはひと回り大きくなり、デザインも大きく変えた。
若いカップルをターゲットにする3ドアモデルは「ワンルーム&ツインゲート」をテーマに開発され、リアには上下開きのツインゲートを採用している。サンバのダンシングシルエットにこだわり、躍動感あふれるサンバボディには段差のないサッシュドアやフラットなドアハンドルを採用した。人気が低迷し、脇役に甘んじていた4ドアセダンには「フェリオ」のサブネームが与えられ、デザインも若返りを図っている。
パワーユニットも魅力的だ。ファミリー系の心臓は1カム4バルブと呼ぶSOHC4バルブで、可変バルブタイミング&リフト機構のVTECエンジンが主役だ。ほとんどが電子制御燃料噴射装置のPGM-FIを装着し、希薄燃焼を行って吸気バルブを休止させる低燃費のVTEC-Eも加わった。
フラッグシップのSiRが積むのは、自然吸気エンジンながらターボ並みにパワフルなDOHC(4バルブ)・VTECだ。リッターあたり100psを超える高性能エンジンで、高回転のパンチ力も伸びも驚くほど鋭い。5代目シビックは軽快な走りに加え、環境にやさしいクルマづくりの姿勢が評価され、安定して売れた。
2000年代になるとシビックは大きくコンセプトを変えている。2000年に登場した7代目の「スマートシビック」はパッケージングの革新を行い、広くて快適なキャビンを手に入れた。
メカニズムのハイライトは、センタータンクレイアウトを採用したことだ。だが、2001年に登場したフィットも同じようにセンタータンクを採用し、広いキャビンと使い勝手のいいラゲッジルームを実現している。デザインも若々しかったので、上質感を認めつつも人気はフィットに移っていった。
日本ではシビックのやりたいことを弟分のフィットがやってしまったので、7代目からは影の薄い存在になる。だが、ファミリー系モデルに代わって光彩を放ったのはスパルタンモデルのタイプRだ。
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