それはオープニングラップ、クラッシュでカメラが切り替わった隙に、あっという間に起きた出来事だった。8番手スタートのチームインパル、平川亮が5台抜きの離れ業をやってのけたのだ。
スタート直後といえば、後ろから迫るライバルを牽制しつつ、少しでも空いたスペースを探して鼻先を入れるタイミングをうかがうという難しい時間。
そのタイミングを制した平川が見事に優勝を飾ったスーパーフォーミュラ2022第4戦をレポート!
文/段 純恵、写真/TOYOTA GAZOO Racing、HONDA
■まるでマラドーナ!? 5台抜きの離れ業を見せた平川亮
予選8番手からスタートした平川亮(28、インパル)の黒いマシンが3番手となってオープニングラップの最終コーナーに現れたとき、誰もが「いつの間に?」と目をシロクロさせた。
スタート直後の1コーナーで平川が二つポジションを上げたことはモニターでも確認できたが、その後発生したクラッシュシーンにテレビカメラが切り替わったため、黒いマシンがさらにポジションを上げる様子を逐一確認することはできなかった。
スーパーフォーミュラ(SF)が今後さらに増やして世間にアピールしようとしている追い抜きシーン、それも滅多に見られない5台抜きの離れ業が映し出されなかったことは実に残念だが、やってのけた当の平川はというと、狙い以上の追い抜きの成功が大逆転勝利の最大の要因としつつ「うまく決まってよかった」と落ち着いたものだった。
スタート直後の位置取りといえば、とかくマシンを左右に振って自分に迫るライバルの動きを牽制することになりがちだ。
前後左右にいるマシンの動きを瞬時に判断し、素早く反応しながら空いている場所へぐいぐいマシンを進めてポジションを上げられるドライバーとなると、国内では平川をはじめ速さと経験をあわせもつ数名だろうか。
その一人のディフェンディング王者、野尻智紀(32、無限)は、予選で14年ぶりの快挙となる3戦連続ポールポジション獲得の速さを発揮。
しかし、決勝でのラップタイムは平川、そしてタイヤ交換を遅らせる作戦を成功させて2位となったサッシャ・フェネストラズ(23、KONDO)、同じ作戦を成功させてSF参戦3戦目で初表彰台にあがったルーキーの三宅淳詞(23、チームGOH)にも遅れをとることとなった。
勝負強さでは人後に落ちない野尻だが「平川選手に対抗できるだけの力強さはなかった」と振り返ったくらいだから、たとえタイヤ交換をレース後半まで引っ張れたとしても優勝を狙うのは厳しかっただろう。
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