一般的に乗用車は前後に同じタイヤを装着して販売される。それによってタイヤの管理がしやすくなるといった利点があるからだ。例えば前後のタイヤを入れ替えてローテーションを行うことで、摩耗が均一化してタイヤライフを伸ばすことができる。
ところが一部のスポーツモデルでは、前後に異なるサイズのタイヤが装着されている。その狙いを解説しよう!
文/藤田竜太、写真/NISSAN、ベストカー編集部、Adobe Stock(トップ画像=Juerg@Adobe Stock)
■タイヤローテーション不可! 前後のタイヤサイズが違うクルマたち
F1マシンやスーパーGTの車両を見ると、フロントタイヤよりリアタイヤの方が大きいクルマが主流だ。一方、市販の乗用車の場合は大半が前後同サイズのタイヤだが、一部のスポーツカーはレーシングカーと同じように、前後異なるサイズのタイヤだったりする。
例えば、新型フェアレディZ(RZ34)のバージョンSTは、フロント255/40-19、リア275/35-19の組み合わせ。GRスープラはフロント255/35-19、リア275/35-19だ。
前後同サイズにすれば、部品も共有化できて、コストも下げられ、タイヤローテーション(前後のタイヤを入れ替えることでタイヤの摩耗を均一化する)も可能になる。良いことずくめな気がするが、なぜわざわざ前後異サイズのタイヤを採用するのか。
簡単にいうと、これらのクルマは前後のタイヤで仕事量に大きな差があるため。リアに大きいサイズのタイヤを履くクルマは、後輪駆動の大パワー車がほとんど。RZ34は405馬力のFRだし、GRスープラも387馬力のFR。
RRのポルシェ911ターボはもっとわかりやすい例で、重たいエンジンをリアに載せ、なおかつエンジンパワーも大きいので、リアタイヤにかかる負担が極端に大きく、タイヤにかかる負担に見合ったサイズになるよう、リアタイヤのサイズをアップすることで、前後バランスをフォローした。
だったら、リアに合わせてフロントも大きなサイズにすればいいのに、と思うかもしれないが、タイヤは太ければ太いほどいいわけでなく、ステアリング感覚やワンダリング(路面の状態によって発生するふらつき)、乗り心地、コストなどは、細いタイヤの方が有利。
太いタイヤを履くとハンドルの切れ角が制限されることにもなるし、後輪駆動車のフロントタイヤなら、操舵力を伝え、荷重を支え、制動力を伝えるだけのキャパがあれば十分だ。
一番大事なことは前後のバランスがとれていることなので、自動車メーカーはわざわざフロントにオーバースペックのタイヤを履かせるような設計はしない。大パワーの後輪駆動車が、前後異サイズのタイヤを装着理由はここにある。
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