切磋琢磨した名車たちといえばすぐ思い浮かぶのが「ランエボvsインプレッサ」など。しかしよくあるライバル対決にはあまり出てこない、地味に切磋琢磨した名車たちもあります。
特にスポーツモデル以外ではなかなか目立たないものが多いが、快適性や実用性向上のためにライバルを徹底的に研究して、ネガをつぶして新型につなげるなんて開発も盛んだった。
今回は目立たないけれど、ライバルがいたからこそ名車に育ったクルマたちを揃えました。
文:片岡英明/写真:ベストカー編集部
■アルトとミラの戦いは馬力から燃費へ
軽自動車の販売がどん底にあった1979年春にスズキはボンネットバンのアルトを発売した。
税制面で優遇されていた軽商用車だったから、税制の盲点を突いて47万円という驚異的な低価格で発売している。
商用車だが、キャビンは不満のない広さだし、走りもいい。だから大ヒット作となった。その1年後の80年6月に、ダイハツはミラ・クオーレ(82年にミラと改名)を送り出した。
これ以降、アルトとミラは熾烈な販売合戦を繰り広げ、550cc軽自動車を黄金時代へと導いている。後発のミラは時代に先駆けて4WDモデルやターボ、ウォークスルーバンなどを送り込む。
2代目のときにはエアロパーツをまとい、ターボで武装したスポーティな商用車、ミラTR-XX (ダブルエックス)を投入した。
アルトも負けていない。1986年に軽自動車初のDOHC4バルブエンジンを積み、1987年2月には3気筒DOHC4バルブエンジンにインタークーラーターボのアルトワークスを放っている。
ネット出力で64psを絞り出すジャジャ馬だったから、FF車に加え、フルタイム4WDも設定している。64psの自主規制の原因を作ったのが、このアルトワークスだ。
1998年秋に660ccの軽自動車は新規格になり、この時期に登場した5代目からアルトとミラは衝突安全性能を大幅に引き上げた。
また、21世紀になると燃費競争も激化している。低燃費技術を積極的に導入したのは7代目のときに加わったミライースからだ。
燃費競争に火をつけたダイハツに対抗し、スズキも低燃費シリーズのアルトエコを送り込んでいる。
また、現行モデルでは燃費に加え、先進安全装備を盛り込み、上級クラスをしのぐ安全性能を手に入れた。手強いライバルがいたから、アルトとミラは一級の実力派になったのだ。
■ファミリアとシビックはFFハッチの頂上決戦
1980年夏、コンパクト・ファミリーカー市場に旋風を巻き起こしたのがマツダのファミリアだ。
初代のVWゴルフを徹底研究して開発し、FF方式に生まれ変わったファミリアは、発売されるやデートカーとして大成功を収めている。
陸サーファーを生むなど、ヤングを引きつけたのは、電動サンルーフやラウンジシートなどを標準装備した赤い3ドアHBの1500XGだ。
また、ドレスアップブームにも火をつけている。エアロパーツやドアミラーを装着したファミリアが街にあふれた。発売されるやカローラとサニーからベストセラーカーの座を奪った。
このファミリアに対抗心を燃やしたのがFF2BOXの元祖、シビックだ。
1983年9月に登場した3代目の「ワンダーシビック」はロングルーフを採用したスポーティなルックスが話題を呼び、クリーンヒットを飛ばしている。
高効率の3バルブエンジンに加え、スポーティグレードのSiには1.6LのDOHC4バルブエンジンを搭載した。
1985年秋にファミリアはモデルチェンジし、DOHCターボやフルタイム4WDによってスポーティ度を高めた。
これに対し1987年に登場した第4世代の「グランドシビック」は、自然吸気エンジンだけで直球勝負を挑んでいる。
気持ちいいDOHCエンジンに加え、1989年秋には可変バルブタイミング&リフト機構のDOHC・VTECを投入。ドラマチックな加速を見せたのである。
ライバル関係にあったファミリアとシビックは、トヨタと日産と違うアプローチでひと泡吹かせ、コンパクトカーの楽しさを多くの人に伝えたのだ。
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