アントニオ猪木さんを追悼する「INOKI BOM-BA-YE×巌流島in両国」の開催を12月28日に控え、俺は例年以上にせわしない年の瀬を迎えていた。時間のないなかイベントの準備をしなければならず、ちょっとしたことでイラつくこともあるが、そんな俺の気持ちを落ち着かせてくれるのが大好きなクルマ。たわいもないクルマの話をするだけで、気分が晴れてくるから不思議なものだ。
そんな忙しい合間を縫ってやってきたのが、静岡県裾野市にあるフジツボさん。マフラーを換えてみませんか? と誘われ32GT-Rのマフラー交換を行うのだ。1時間ほど交換の時間があるため、ファクトリーを覗いてみることにした。
TEXT/小川直也 PHOTO/成田颯一
■フジツボを付けた初代RX-7の走りに暴走王感激!
マフラーといえばステンレス素材が圧倒的に多いが、ヤードにはパイプが何十本も置いてある。これをレーザーの専用工作機でカットするのだが、俺の大外刈りに負けず劣らずの切れ味にびっくり! さらにマフラーやエキマニの集合部の溶接が凄かった! なんと1本1本手作りとは恐れ入った。4本のエキマニが溶接される姿は俺が得意とした「トライアングルサブミッション」のような密着感でカンペキだ!
感心していると、藤壺政宏社長がポンポンと肩を叩いてくる。
「乗って欲しいクルマがあるんですよ」
そういうと、真っ赤な初代1981年式のサバンナRX-7(SA22C)がリフトに上がっていた。おお~懐かしいぞ。小学生時代にこのクルマを初めて見た時の衝撃は猪木さんに往復ビンタを食らった時にも負けないものだった。当時はスーパーカーブームでポルシェ935クレーマーにも似たRX-7の美しいシルエットは、「このクルマはなんだ?」 と友達の間で話題になったほど。
実は以前、はちきれんばかりの期待を持ってノーマルのRX-7に乗ったことがあるが、NAロータリーは高回転まできれいに回るものの、下のトルクがなくて乗りにくいクルマだった印象がある。だから今回も「きれいなクルマだな!」と思いはしたが、正直あまり期待せずに乗りこんだ。必要最小限の室内空間は、頭がかすってしまうくらいだが、シートレールを後ろにすれば、しっかりとポジションが取れる。
俺がドライビングポジションにこだわるのは、柔道でいうなら組手と同じ。充分な組手が取れないと技が掛けられないのと同じで、クルマもドライビングポジションが不充分だと運転を楽しめない。その点RX-7は俺でもしっかりとポジションが取れるから北米で人気だったことにも納得だ。
アイドリングから何度か空吹かしすると、キャブレター独特の少しかすれた音が響く。「こいつやるじゃないか!?」と思いながらクラッチミート。12A型ロータリーは、太く雑味のない気持ちのいいサウンドを奏で、スピードが乗っていく。中低速のトルクもあって、以前乗ったノーマルよりもダンゼン乗りやすい。
最高出力130ps/7000rpm、16.5kgm/4000rpmという数字は今でこそたいしたことないが、40年以上前のクルマとは思えないくらい、シャープな走りを見せるのは個体のよさに加え、フジツボのマフラーの持つ排気技術がビタミン剤のように滋養を与えているからに違いない。
ブリッピングしながら4速から3速に落とす時の逞しくも懐かしいロータリーサウンドには思わずグッときた。
クルマを降りてすぐにマフラーを見に行く。ソリッドなスラッシュカットを与えられた2本出しのデザインは大きめのタイコ部分とともに無差別級のド迫力だ。
「Legalis(レガリス)R」と命名されたこのマフラーは15万4000円(税込み)とリーズナブル。旧車でも個体さえよければ、満足度120%! フジツボはハコスカやTE27レビン/トレノ、セリカXXなど名車たちを現代の排気技術で生き生きと蘇らせるマフラーをラインナップしており、俺の友人にも紹介しようと決めた!
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