イギリスのHVSは水素燃料電池の商用車を開発している新興メーカーだが、同社が主導するコンソーシアムが英政府系のプロジェクトに採択された。世界初の自動運転・燃料電池大型トラックを開発し、2024年から実証試験を開始する計画だ。
また、遠隔地からのトラックの「リモート運転」によりドライバーの雇用機会を拡大することで、ドライバー不足や働き方改革といった各国共通の課題を先進テクノロジーで解決する狙いもある。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Hydrogen Vehicle Systems Ltd.
コンソーシアムに政府系ファンドが資金提供
イギリス(スコットランド)のグラスゴーを本拠とする水素商用車メーカー、ハイドロジェン・ビークル・システムズ(HVS)は2023年2月1日、同社が率いる企業コンソーシアム「ハブ2ハブ」が、イギリスの政府系プロジェクトに採択されたことを発表した。
SAEレベル4の完全自動運転が可能で、かつドライブトレーンに水素燃料電池を採用する大型トラクタをイギリス市場向けに開発し、2024年から試験を開始する。今回、政府から提供される資金は約660万ポンド(約10億円)で、完全自動運転・燃料電池大型トラックが実現すれば世界初となる。
次世代の輸送とロジスティクスを実現するため、HVSはコンソーシアムのメンバーであるフュージョン・プロセシング(自動運転システムを開発している)やASDA(アズダ、イギリス大手の流通・小売り企業)とともに、戦略パートナーの協力を得ながらプロトタイプ2台の開発を行なう。
トラックの自動運転によるコスト削減が実証されれば、輸送の持続可能性や新しいビジネスモデルの確立に向けた前進となるほか、エネルギーセクターに次いで多くのCO2を排出している輸送セクターにおいてゼロ・エミッション車の受け入れが加速し、商用車による環境インパクトを小さくすることも期待されている。
また、安全性や効率性など、輸送の自動化の可能性が示されることで、この分野で新しい働き方や新たな雇用が生み出されるかもしれない。
HVSは2022年11月に革新的な水素パワートレーン技術によって運送業界に破壊的変革をもたらす計画を打ち出している。
このコンソーシアムへの資金提供は自動運転商用車開発に向けてイギリス政府が公表した7つの助成プロジェクトのうちの一つで、ほかには港湾や病院等での自動運転シャトルバスの導入、オンデマンド自動運転タクシーの試験導入、自動運転車を監視するコントロールハブの設立といったプロジェクトがある。
車両はHVSが開発し、自動運転システムはフュージョン・プロセシングが、運行はASDAが担当するとみられる。製造する2台はいずれも自動運転が可能な燃料電池大型トラクタとなるが、運転席やドライバーの有無など、車両や実証する目的は異なるものとなる。