自動車ディーラーには朝から晩まで色々なお客さんが来店する。大多数は全く問題のない良いお客様だが、ほんの数パーセントが言いがかりや過度な要求を突きつけるクレーマーだ。ディーラーで月に一度は訪れるクレーム処理の実態を追う。
文/佐々木亘
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■認定中古車は高すぎる! 謎の経済論客
整備基準が高く、長い保証と高品質を売りにする認定中古車は、他の一般中古車店のクルマに比べれば割高だ。多くは、これを理解したうえで今後の安心や信頼を含め、認定中古車を高いお金を出してでも買っていく。しかし、こうした中古車の差が、クレーマーの標的になることもある。
近隣の中古車販売店に、正規ディーラーが展示する認定中古車と、同じ年式・グレード・色・装備で、同程度の走行距離の中古車が販売されていた。そのクルマの車両本体価格は250万円、いっぽうで認定中古車は300万円だった。
ディーラーに訪ねてきたのは初老の男性。認定中古車を見るなり、「これを買う」と言うものの、「隣の中古車屋では同じクルマが250万円だった。同じクルマなら同じ値段にしろ」と要求してきたのだ。つまり50万円値引けという。
続けて、「同じクルマなのに50万円も違うのはなぜだ。」と聞くので、対応した若手営業マンは「長期の保証や点検費用などを入れた価格になっております」と正しい回答をした。
すると逆上した客は「こんな価格差は詐欺だ。お前は一物一価の法則を知らないのか。私は経済の専門家だぞ」と声を荒げた。
確かに一物一価の法則というのはある。経済学の概念でモノやサービスの価格は一つに決まるというものだ。ただし、この法則が成り立つのは「完全競争市場」が前提であり、現実の市場では成立することはほとんどない。
難しい言葉を使って、若手を脅しに来ていると感じた筆者は、二人の間に入って男性に話す。
「失礼ですが、経済のご専門であれば、一物一価の法則が一般市場では成立しないのをご存知かと。また、当店の販売価格にご納得いただけないのであれば、お客様のご期待に沿える別なお店でご購入ください。」
男性はたじろぎ、二の句が出ずに退店していった。経済のみならず、法律や物理学、ひいては自動車の知識などを攻撃の材料として使用するクレーマーは多く存在する。自称専門家には、「手も口も出さない」方が無難だ。
コメント
コメントの使い方整備士をやっているけど、買った店に持って行かない客は本当に迷惑。
マンション関係の仕事をしてますが、同じですね。
共通するのは、人間が作るのだから100%完璧の物なんてあり得ない、という事を理解できない。
それと、最近増えているのは他人より多くやってもらって得をしたと満足する連中。損得でしか考えられない連中です。
日本から中庸が無くなりつつあると思う。