自動車業界のモデルライフは概ね5年程度。新型が続々と登場する時代ではなくなったにせよ、あまりにも長生きしているクルマも多い。
発売から5年、もしやすると10年も生き残っているのに販売台数もそこそこ堅調に推移しているクルマたちを集めてみました。
なぜ長生き車たちは生き残れるのか、その理由は意外なところにありました。
■長寿車たち(CT200h、デリカD:5、ヴィッツ)の特選写真
文:渡辺陽一郎/写真:編集部、トヨタ
■車両自体の高性能化が長生き車誕生の理由
最近は発売されて6年以上を経過する車種が増えた。フルモデルチェンジの周期が伸びた背景には複数の理由がある。
まずは開発費用の問題だ。今は電動化を含めた環境対応、安全装備、自動運転技術、通信機能など、さまざまな開発が活発に行われる。そうなれば車両の開発費用にしわ寄せが来る。
しかも今の日本車は、80%以上が海外で売られ、国内比率は20%以下だ。国内向けの商品開発が消極的になり、これもフルモデルチェンジの周期を伸ばす原因になる。
クルマの耐久性が高まったことも挙げられる。1980年代までの日本車は、耐久性が低く10年間も使うとかなり疲労した。ドアの下側が錆びて、穴が空くこともあった。
乗用車の平均使用年数(平均寿命)は、1980年頃は約8年だった。しかし今は平均使用年数が約13年に伸びた。
10年前に生産されたクルマも普通に使われ、中古車市場でも相応の価格が付く。とても良いことだが、フルモデルチェンジの周期が伸びても、乗り替えに不都合が生じにくい。
このほかカーデザインが成長期を過ぎて、安定期に入ったことも理由のひとつだ。1980年頃までは、10年前のクルマは古く感じた。
4年ごとにフルモデルチェンジを行い、その度に内外装のデザインを刷新していたからだ。
その進化の速度が、最近は下がってきた。例えばフォレスター、CX-5、N-BOXの標準ボディなどは、フルモデルチェンジを行っても外観があまり変わらない。頻繁にフルモデルチェンジを行う必要性が薄れた。
ただし技術的には、古くなるとデメリットも生じる。今なら急速に進歩する緊急自動ブレーキを作動できる安全装備と、運転支援機能だ。車種によっては、プラットフォームを刷新しないと、先進の安全装備や運転支援機能を装着できない。
■CT200hは使い勝手のよさで現存
そこで基本設計の古いクルマが生き残っている理由と課題を考えたい。まずはレクサスCT200hを取り上げる。登場したのは2011年1月だから、すでに8年を経過した。
レクサスCT200hは直列4気筒1.8Lエンジンをベースにしたハイブリッドのみを搭載する5ドアハッチバックだ。
ハイブリッドシステムはプリウスと共通になる。プラットフォームは生産を終えたレクサスHS250hやSAIに近く、2006年に発売された初代オーリスから発展した。
運転感覚としては素性の良いプラットフォームだが、今ではさすがに古い。安全装備は、レクサスセーフティシステムプラスを追加装着した。
歩行者を検知できる緊急自動ブレーキ、車線逸脱警報と車線に戻る操作を支援する操舵制御、車間距離を自動調節しながら追従走行できるクルーズコントロールなどが備わる。
一定の水準に達するが、夜間の歩行者や自転車は検知できず、クルーズコントロールも全車速追従型ではない。
レクサスは高級ブランドだが、今は世界的に流行している乗用車系のプラットフォームを使うSUVに力を入れる。
ほかのカテゴリーはフルモデルチェンジの周期を長期化させ、先代レクサスLSも約11年間にわたり生産を続けた。
コンパクトな車種の開発も、SUVのUXが優先され、CT200hは基本設計が古くなった。
HS250hなどと違ってCT200hが生き残る理由は、1か月に200~300台は売れるからだ。
販売店によると「レクサスCTは、LSやGSを使うお客様のセカンドカーとして人気が高い。前期型のCTを使うお客様が、後期型に乗り替えることもある」という。
需要が見込めるから生産するのだが、安全装備や乗り心地を考えると、フルモデルチェンジを行って古さを払拭して欲しい。
CT200hはセカンドカーの需要が多いことからも分かるように、国内市場に適した使いやすいレクサスだ。
UXに比べると重心も低く、新しいプラットフォームを使って開発すれば、走行安定性や乗り心地をUX以上に高められる。次のレクサスの新型車はCTにして欲しい。
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