個人タクシーを中心に、一般乗用車のタクシーが増えた現在でも多くのタクシーはLPガスを燃料としている。一般社団法人全国LPガス協会によると2020年で全国のタクシーの8割にあたる約17万台がLPガスとなっているそうだ。なぜ日本のタクシーはLPガスなのか?導入の歴史と共にその理由に迫ってみよう。
文/西川昇吾、写真/トヨタ、日産
■ガソリンの代替え燃料として誕生
日本にLPガス車が登場したのは1940年ごろだ。戦争によって不足したガソリンに代わる自動車用燃料として採用された。
大戦に備えるような形で、政府はプロパンやメタンを自動車用燃料として使用する研究を開始していて、1938年には内務省からメタンガス及びプロパンガスを自動車用燃料としての仕様を認められている。
LPガス車とガソリン車を比べると燃料費の安さが話題となるが、LPガス車はコスト的な問題よりも国際情勢や外交、軍事など複雑な事情が絡んだが故の登場だったのだ。
しかし、戦後にタクシー事業者たちはコストが安く高オクタン価なことに注目し、本格的に導入を開始。運用上でも問題が無く良好な結果となったため、瞬く間にタクシー業界に広がることとなったのだ。
■安さを理由にタクシー以外にも普及
安いと言われているLPガスの価格。2023年3月現在、その金額はリッター当たり121.4円。レギュラーガソリンの平均価格は3月末時点で168円だったので、LPガスならば燃料費をレギュラーガソリンの約7割に抑えることができる。
このような燃料費のメリットから、自動車を業務で使用する他の事業者からも評価され、1992年には東京都、生協、ヤマト運輸、LPガス業界がトヨタ自動車と共同でLPガス使用のトラックを開発し一斉導入を行った。現在、教習車や幼稚園の送迎バスなどにもLPガス車は広がっているほどだ。
タクシー業界としてはLPガスをメインの燃料としてきた歴史が60年近くある。それだけに、運用形態はLPガスありきと言えるだろう。そのような背景を考慮して2017年に登場したJPN TAXIはハイブリッド仕様ながらLPガス車を採用している。
他にもノートe-POWERのLPガス仕様が存在していたりと、タクシー業界向けにLPガスのハイブリッド仕様は存在しているのだ。ハイブリッド仕様のLPガス車はもしかするとBEVにも移動のランニングコストで負けない、現代の選択肢の中では究極のエコカーとも言えるかもしれない。
コメント
コメントの使い方なんか、同じ1㍑で比較しても熱量がLPガスの方が低いから出力が低い=その分多く燃料を使い、3割減よりだいぶ節約出来る幅が低いと聞いた事がありますが……
エンジンのバルブクリアランスの調整を頻繁にやらないといけないから、安いからといって安易に手を出さない方が良いよ。