日本で販売される車は、渋滞が多いという事情もあり、全体で見るとAT(=アクセルペダルとブレーキペダルしかない2ペダル車)の比率が95%を超えている。
ATはオートマチック・トランスミッションの略。その名のとおり自動変速のため、MT(マニュアル・トランスミッション)車のように、ドライバー自ら変速操作を行う必要はない。
ただし、現在でも多くのAT車に、ドライバー自らシフトアップ/ダウンを行うことができる“マニュアルモード”が付いている。
かつては「ATのマニュアルモードを多用しすぎると機械側に負担がかかる」といったことも聞かれたが、実際どうなのか? 種類によって特徴が異なるATの長所・短所と合わせて解説する。
文:永田恵一/写真:SUBARU、編集部
「ATの代表選手」ステップATとCVTの長所と短所は?
■ステップAT
昭和の時代までは「AT=ステップAT」と言ってもいいほど長い歴史を持つ機構で、1速、2速、3速と複数段のギアを持つ。
内部にはプラネタリーギア(遊星歯車)が数セット入っており、この動きによって段数が決まり、自動変速される。エンジンの動力はトルクコンバーターと呼ばれるオイルを使った流体クラッチによって伝達されることがほとんどだ。
【長所】
・トルクコンバーターを使うこともあり、渋滞中や車庫入れといった極低速域も含め全体にスムースで扱いやすい。
【短所】
・車による違いはあるが、ほとんどなし。
かつてのステップATは、トルクコンバーターのスリップが大きかったことやMTが5速だった時代に3速や4速と段数が少なかったこともあり、「アクセル操作に対するレスポンスが悪い、ダイレクト感がない、燃費が悪い」という面は否めなかった。
しかし、今では6速ATが当たり前となっているほどの多段化、トルクコンバーターのロックアップ(直結状態)領域の大幅な拡大、シフトダウン時のブリッピング(MTの回転合わせに相当)の採用といった技術が進歩。
その結果、ステップATのネガはほとんどなくなり、今ではMT以上の燃費やサーキットのラップタイムに代表される速さを記録するATも珍しくなくなった。そのため、特に日本では無難なATの1つとして再び注目が高まっている。
■CVT(無段変速機)
プーリー(滑車)と金属ベルトやチェーンを組み合わせるという比較的シンプルな構造で、切れ目なくエンジンの回転だけが変わるAT。スクーターのようなものと思えば理解しやすい。
CVTは金属ベルトの耐久性の問題で、20世紀までは1.5L以下の小排気量車用のものとされていたが、こちらも技術の進歩で今ではスバルWRX S4の2Lターボエンジンや日産エルグランドの3.5L・V6エンジンのような大パワーにも対応できるようになっている。
【長所】
・ギアチェンジのないスムースなフィーリング
・エンジンの効率のいい回転域を使って走ることができるので、常用域や高速道路を含め日本のスピードレンジでは燃費がいい
・高回転域を保ちながら走ることもできるので、サーキットに代表されるスポーツ走行でも常にパワーバンドを外さずに走れ、結果として速さに貢献するトランスミッションに成長する可能性がある
【短所】
・車による違い、ユーザー各々の許容範囲によるところも大きいが、アクセル操作に対するダイレクト感に欠ける、加速する際にエンジン回転が先に上がり、加速は後から着いてくるというフィーリングに違和感を覚えることがある
・スピードレンジが上がってくると、CVTを作動させる油圧を発生させるための出力損失が大きくなってくるので、燃費で不利になってくる面がある。
総合的に見るとCVTは日本の道路環境では有利な点も多いので、小排気量車や実用車を中心にステップATと並ぶATの柱となっている。
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