自動車メーカーの2023年定時株主総会も大詰めを迎えている。ここでは前社長の中村知美氏から大崎篤氏に社長が交代したスバルの課題について経済的側面から福田俊之氏が今後のEV戦略を詳しく分析した。
文/福田俊之、写真/ベストカーWeb編集部、ベストカー編集部、スバル
■スバルもフタ桁の増収増益を予想
半導体の供給不足の解消で、新車販売が回復していることや想定を超える円安を追い風に、国産自動車メーカーの2024年3月期の業績見通しは、トヨタ、日産、ホンダなど7社すべてが増収を予想し、本業の稼ぎを示す営業利益もスズキと三菱を除く、5社が増益を見込む。
このうち、年間生産100万台クラスと、規模としては小粒なスバルだが、主力市場の米国を中心に好調を維持。売上高にあたる売上収益は前期より11%増の4兆2000億円、営業利益も12%増の3000億円を見込んでいる。
そんなフタ桁の増収増益を予想するスバルは“スバリスト”と呼ばれる熱狂的なファンに支えられて、衝突安全支援システムの「アイサイト」などクルマに独自の魅力はあるものの、気候変動に関連する脱炭素社会に向けた取り組みはいまひとつピンと来ない。
だが、12年ぶりの技術系出身社長の誕生を機に、イメージを払拭すべく電気自動車(EV)への大胆な転換戦略を打ち出した。
■2028年以降にEV生産40万台体制へ
スバルのEV戦略とは、まず2020年にそこから10年後の2030年に世界販売の4割以上をEVに移行すると発表。さらに、それから2年後の2022年には主力工場のひとつ、群馬県太田市にある矢島工場のEV生産能力を年間10万台にする計画などを公表した。
そして、2023年5月11日の決算発表では、2026年末には現在販売しているヨタとの共同開発による電動SUV「ソルテラ」に加えて、新たに3車種の電動SUVを発売し、矢島工場の生産能力を20万台に引き上げることを発表。
それとともに2028年以降、群馬県大泉町の大泉工場に新設する生産ラインを含め、EVの世界生産能力40万台体制を確立するという具体的なプランを示した。
グローバル販売の4割をEVに転換するという当初の計画の実現に向けて着実に手を打っていることをアピールしたのだった。
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