ここ数年、線状降水帯などが頻繁に発生し、それとともに冠水路に出くわす機会も多くなった。では、冠水路を走るとどうなるか? 結論から先に言うと、「最悪の場合は廃車」である。そこで今回は、冠水路を走るリスクを考えていこう。
文/今坂純也(DIRT SKIP)、写真/写真AC
たった水深30cmでもエンジンに大ダメージが!
水深30cm程度というと、普通乗用車ではタイヤの半分くらいの水深。2010年にJAFが行ったテストでは、この水深では、普通乗用車もSUVも時速10km、時速30kmで走行はできたものの、時速30kmではエンジンルーム内に多量の水が入ることがわかっている。
エンジンルーム内に水が入るとエンジンは止まらなくても、前後ホイール内にある金属製のハブベアリングは確実に水に浸かり、多くの場合サビが出る。特に海水では即サビが出るようになる。
冠水路を走行後、しばらくして足回りから「ゴー」や「ゴロゴロ……」などの異音が出るようになったら、ベアリングがサビている可能性大。
この場合、ハブベアリング交換のみで済む場合もあるが、国産車の場合は部品単体で数千円〜、ホイール1カ所あたりの工賃は1万円〜の出費。4輪交換となると最低でも4万円以上の出費である。
なお、ハブベアリングからの異音を放置し、さらにアクスルシャフトまで損傷すると数十万円の出費となる場合があるので要注意!
水深60cm程度の冠水路を走ると廃車の危機に
水深60cm程度というと、普通乗用車ではフロントグリル付近の水深。前述のJAFのテストによると、タイヤはほぼ水に浸かっており、ドア下端より上まで水がある状態だ。
この場合、普通乗用車は時速10kmでしばらく走行したが、そのうちエンジン停止。SUVは時速10kmなら可能だったが、時速30kmではエンジンが止まって走行不可に。
この水深では、時速10kmでも普通乗用車ならエンジンルーム内にある水に弱いオルタネーター(発電機)の内部がショートし、電力が供給されなくなってエンジンが停止することも。
修理はオルタネーター交換となり、数万〜数十万円の出費。エアクリーナーが吸水し、空気を吸えなくなってもエンジンは停止(軽微な出費で済む場合も)。
万が一動いているエンジン内に水が入るとウォーターハンマー現象を起こしてエンジンは損傷する。
ウォーターハンマー現象とは、圧縮できない水がシリンダー内に入ることで圧力の逃げ場がなく、コンロッドが折れるなどエンジン内部が大きく損傷すること。この場合はエンジン交換か数十万円単位での出費となる。
また、エンジンが停止して水深60cmの所にクルマが長時間停まっていたとしたら、室内のフロア部分には泥水が入っている可能性も大。その後、水を排出して泥などを取り去って乾燥させても、室内には多くの場合、悪臭が残る。
車両保険に入っていればなんとか元通りにできるかもしれないが、その後のクルマにトラブルが起きないとは限らない。修理をあきらめて買い取り店などに出しても査定は想像以上に大きく下がることになるし、「廃車」を選ばざるを得ないことも多い。
つまり、冠水路をやむなく走る場合は、タイヤの半分くらいまでを限界と考えたい。さらに、水しぶきを派手に上げて走るのではなく、時速10km程度のゆっくり走行で慎重に走るべき。怠ってしまうと、驚くほどの出費や廃車の憂き目にあうことになるのだ。
また、自身が使う道路は冠水しやすい道路か? は、国土交通省の「道路防災情報WEBマップ」などで事前にチェックしておくことをおすすめする。
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