クルマに傷をつけてしまった時にお世話になるのが鈑金修理工場。しかし近年、最新技術が原因で、簡単に修理ができない車種が増えているという。鈑金修理に携わる職人に、今どきグルマの鈑金苦労話を聞いてみた。
文/デグナー12(Team G)、写真/写真AC
■色合わせが難しい……個性的なボディカラーが増加中
マツダのソウルレッドは見る角度によって独特な濃淡が出ると言われ、人気を集めているが、実は鈑金職人泣かせの代表的なボディカラーである。
その理由は塗装の仕上げに色つきのクリア塗料を使用するから。
メーカーの指定通りに調色しても、クリアの塗り方や厚みによって色味が変わってしまうというから本当に職人泣かせだ。
ベテランの腕をもってしても修復箇所とその他の色味を一発で合わせられるか毎回ハラハラするという。
その他にもR35GT-Rやレクサスのように何層も重ね塗りしている車種や、小さい傷を自然に修復する特殊塗料が使われている車種は修理コストも跳ね上がる。
修理請求額が折り合わずに、既存の塗料で色味だけをあわせて済ませることも少なくないようだ。
さらに、人体や環境への影響が少ない水性塗料への切り替えが進んでいるのも悩みの種。
塗料自体が買い直しとなる上に、乾きも既存塗料より悪く、作業効率がダウン。
どんなにていねいに鈑金しても仕上げの塗装が悪ければ台無しだ。塗装の技術レベルだけでなく、設備にも柔軟な対応が求められている。
■叩きと引っ張りが通用しない!? 高張力鋼板やアルミ素材の採用
薄くても張りを強くすることで剛性を保てるとして新型車への採用が進む高張力鋼板。その高過ぎる強度ゆえに鈑金するには生半可な工具では歯が立たない。
溶接機やパテも高張力鋼板に対応したものを使用しないと更に苦労するそうだ。
また、ボンネット以外の外装にも軽量なアルミ素材を採用するクルマが増えてきたが、凹んだ部分に応力が集中して盛り上がる特性を利用して鈑金する鉄素材に対し、アルミ素材は叩いた部分が変形するだけ。
しかもクラックが入りやすいため、叩く加減が難しい。アルミの鈑金はかなりの経験と技術が必要だが、そのような技術を有している職人は少ない。
上記のような理由により、近年の鈑金修理は擦り傷や小さな凹みでない限り、パネルごと交換してしまうことが多い。
塗装済みの部品を供給している自動車メーカーもあり、苦労して仕上げるよりも部品交換の方が確実で効率的ということだろう。
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