アクセラがフルモデルチェンジを行って日本での車名が「マツダ3」になった。
この流れを受けて、続いてモデルチェンジを控えているデミオも、次期型では日本での車名が「マツダ2」に変更されるのではないかともっぱらの噂だ。
そもそも、なぜアクセラは「マツダ3」に車名を変えたのか。マツダが明かした理由から、デミオが「マツダ2」へと車名を変える可能性が見えてきた。
文:渡辺陽一郎
写真:MAZDA、編集部、NISSAN、Daimler
なぜ今? アクセラがマツダ3になった理由
マツダ3に関するひとつの疑問は、今になって車名を変えた理由だ。なぜアクセラではダメなのか。この点について開発者に尋ねた。
「2012年にマツダは新世代商品群の第1弾として、先代CX-5を発売した。この車名はアルファベットと数字で構成され、日本と海外で共通化されている。
そこでアクセラも、海外と同じマツダ3を名乗ることにした。今のタイミングで世界共通の車名に変えた理由は、新しいマツダ3が、プラットフォームやサスペンション、魂動デザインまで刷新したからだ」という。
つまり、先代CX-5を発売した時から、国内仕様の車名を海外と共通化することは考えられていた。今回は新たなプラットフォームやSKYACTIV-Xも採用したから、アクセラをマツダ3に変更したわけだ。
ちなみに日産では、スカイラインやフーガのエンブレムを、同社が海外で展開する「インフィニティ」と共通化した。
理由はスカイラインやフーガが、海外ではインフィニティのブランドで売られるためだが、ほかの日産車とは違う世界基準の上級車種であることも表現している。
なぜ自動車メーカーは車名の統一化を図る?
こういった「世界共通」の表現を行う背景には、「日本国内よりも海外の方が、優れたクルマが売られている」という古い認識もあるだろう。
マツダ3のように海外と同じ車名にすれば、日本仕様が海外仕様と同じ品質に高められたようなイメージが生じる。
商品のグローバルスタンダードには、クルマに限らず「品質が世界共通で、日本仕様も手を抜いていない」というメッセージが隠されていることが多い。
クルマの場合、開発者によると「例えば今の軽自動車は、かなり安全になったが、後面衝突基準は緩い。小型車を含めて、欧州や北米で販売していない設計の古いクルマには、衝突に弱いところがある」という。
しかし、このような安全面の格差は急速に是正されている。
一方で、安全性や顧客満足度の向上において、世界各国で売られるクルマも市場ごとに最適化を図る必要がある。
国や地域によって、走行速度、路面の状態、交通の過密度、乗車人数や荷物の重量などが異なるからだ。
実際、グローバルカーと呼ばれる車種でも、国や地域ごとの最適化を図っている。CX-5も、日本仕様と欧州仕様では足まわりの硬さが異なる。
車名にも同様のことが当てはまるだろう。車名の受け止め方も、国や地域で異なるからだ。
アメ車の影響大きい日本車の車名
もともと欧州車の車名は、アルファベットと数字で表記されることが多く、北米は一般的な固有名詞を使っていた。
このようになったのは、欧州メーカーは企業規模も小さく、車種数も少なかったからだ。
例えば、メルセデスベンツも190シリーズが加わる前は、今のEクラスが「コンパクトメルセデス」と呼ばれ、そのほかは上級の「Sクラス」、クーペの「SL」と商用車程度だった。車種数が少ないから、アルファベットと数字の車名が成り立った。
従って2000年代に入ってSUVを加えた欧州車の名前は、とても繁雑だ。BMWはシリーズ名で統一したからまだ分かりやすいが、メルセデスベンツは「CLA」、「GLA」、「GLC」、「CLS」…、という具合で難解になった。
一方、アメリカ車は、古くからGMの中にもシボレーからキャデラックまで複数ブランドがあり、それぞれ車種も豊富に用意された。アルファベットと数字の羅列では、今のメルセデスベンツのように難解になることもあり、固有の名詞を与えた。
そして、日本の自動車産業は戦後、アメリカを手本に育った。
そのため、三菱は、軽自動車のミニカから上級セダンのデボネアをそろえ、トヨタもパブリカからセンチュリーまでワイドな品揃えを誇った。このアメリカ流のクルマ作りにより、多種多様な商品が揃えられ、日本メーカーは短期間で販売台数を伸ばした。
つまり「アクセラ」のような固有の車名は、根底では日本車が繁栄した歴史にも繋がっている。
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