ホンダが軽トラックのT360で4輪に進出してから、2023年8月で60年を迎えた。その長い間には、日本のモータリゼーションに大きな影響を与えたり、世界で功績を残したモデルが多数輩出されてきた。そこで、ホンダ4輪進出60年を記念し、同社の象徴的な存在をお届けしよう。
文/木内一行、写真/ホンダ
■目指したのは世界に通用するベーシックカー【シビック】
T360で4輪の世界に進出し、その後SシリーズやN360などをリリースしたホンダは、世界に通用するベーシックカーを開発。それが1972年に発売された初代シビックだ。
最大の特徴は、現代のコンパクトカーで一般的な2ボックススタイルをいち早く採用したこと。当時の国産乗用車といえば、3ボックスのセダンタイプが主流。そんななか、有効な居住空間が確保できる台形スタイルは実に独創的だったのだ。
さらに、横置きエンジンのFFレイアウトとしたことも室内空間の確保に大きく貢献。扱いやすいコンパクトサイズながら、ゆとりある快適な空間を確保することができた。
当初は1.2Lの2ドアモデルのみだったが、すぐさま3ドアを追加し、2ATのホンダマチック車も登場、そして、米国のマスキー法を世界で初めてクリアした「CVCCエンジン」を搭載し、スポーティグレードのRSを投入するなど、バリエーションを拡大していったのである。
こうして1979年まで販売された初代シビックは、その間に数々の賞を受賞し、世界的な大ヒットを記録。その後の世代でも威信を保ち、50年以上経った今でもワールドワイドに活躍する、息の長いモデルになっている。
■トールスタイルをいち早く採用したパイオニア【シティ】
「人のためのスペースは最大に、メカニズムのためのスペースは最小に」を意味するホンダ独自のM・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想。これを完璧に具現化したのが、1981年デビューの初代シティだ。
かぎられたサイズのなかで居住空間を最大限確保するために、全高を高くする手法は今や一般的。しかし、1980年代初頭にはそうした発想はなかったため、「トールボーイデザイン」のシティは世界を驚かせたのだ。
ユニークなフォルム、ファニーなマスクと、見た目は愛嬌たっぷりのシティだが、コンパクトボディながら広い居住空間、軽量ボディが生み出す軽快な走りと優れた燃費性能など、その実力は本物。若者を中心に絶大な支持を得たのである。
また、シティ搭載用として同時に開発されたトランクバイク「モトコンポ」もリリース。4輪と2輪を持つホンダの強みを生かし、新たな6輪ライフを提案したのだ。
そして、当時の若者を熱狂させたのがターボ仕様の存在。特に最強モデルにあたるターボIIはブルドックの愛称で親しまれ、迫力ある外観と強烈な走りで人気を獲得した。
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