国内最大級のテストコースを持つ研究開発施設、トヨタ・テクニカルセンター・下山が完成し、運用が始まった。ここは650.8haというから東京ドーム138個分の広大なスペースに11本のテストコースに加え、車両開発棟と試験車両の整備場を持つ画期的な施設。クルマづくりが劇的に変わるかもしれない
文:ベストカーWeb編集部/写真:トヨタ、ベストカー編集部
■「作って走る、壊して直す」を繰り返すクルマづくり
かねて建設が進められていたトヨタ・テクニカルセンター・下山が完成し、2024年3月25日から全面運用が始まった。豊田市と岡崎市にまたがる650.8ha(東京ドーム18個分)という広大な土地に約3000億円を投資して作られた最新の研究開発施設にはなんと3000人も働くというから、一大開発拠点だ。
西、中央、東とエリアは3つに分かれ、西エリアには車両開発棟があり、企画、設計、デザインなどの開発部門が入っているのが大きな特徴で、GRとレクサスの車両はここで開発が進められる。
そして試作車を含めテスト車両がニュルブルクリンクサーキットを模したカントリー路(約5㎞)や高速評価路(約6km)、周回路(約5km)のほか全11のテストコースで鍛え上げられる。
4月2日に行われたお披露目式に出席したモリゾウさんはモリゾウさん自身が運転し、横転し壊れた状態のままのGRヤリスを前に「走って、壊して、直すを、毎日毎日、何度も何度も、繰り返せる場所です」と語った。
このGRヤリスは2023年11月末にラリー車の開発のためにモリゾウさんがダートコースをテスト走行中に不具合があり、砂利の山に乗り上げ、横転したクルマだ。フロントガラスにひびが入り、助手席側のミラーは折れてしまっている。
完全にひっくり返ったにもかかわらず、モリゾウさんにも助手席のラリードライバー勝田範彦選手にもかすり傷ひとつ負わなかったことは、クルマの安全性や強度を表すものだが、開発陣にとって、いいクルマづくりを考える大きなきっかけになったという。
何をどう改善して、もっといいクルマにしていくのか? 真剣に考えたという。マスタードライバーであるモリゾウさんが体を張っていることが、伝わったからに違いない。
■メカニックとエンジニア、テストドライバーがすぐに相談できる環境
クルマをつくるうえで一番大事なことは壊すことだとモリゾウさんは話す。
壊すたびにいいクルマができるという確信を持ったのは、コロナ禍のなかGRヤリスを開発できたからだ。当時モリゾウさんは愛知県蒲郡市にあるKIZUNA研修所に隣接するダートコースでGRヤリスを乗り続けていた。走れば走るだけ部品が壊れていくなか、エンジニアとメカニックが原因を追究し、対策を考えていく日々が続いた。
容赦なく走り、クルマは悲鳴を上げ、いくつもの箇所が壊れた。壊れるたびにモリゾウさん、エンジニア、メカニックが、頭を悩まし、率直な意見を言い合い、改善を重ねた。コロナ禍ということもあり、集中力を高めた開発だったと想像する。その結果としてGRヤリスは発売の日の翌日に富士スピードウェイで開催されたスーパー耐久の24時間レースでクラス優勝を飾った。
弱いところを発売までに洗い出し、鍛え上げたGRヤリスだからこその結果だった。
そのクルマづくりを念頭にテクニカルセンター・下山には、試験車両を扱うメカニックが整備場にいて、上の階にはエンジニアがいる構造になっている。テストドライバーの報告をエンジニアはすぐに駆け付け、聞くことができ、メカニックとともに改善点を見つけていくことができる。
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