他と違う個性を出し過ぎるとクセが強くて、ほとんどの人が敬遠してしまう、屋根空きグルマが存在する。まさにカッコいいと、カッコ悪いは紙一重とひと言でいうには簡単だが、今回紹介するのは、カッコいいクルマを作ったつもりが、そうじゃなかった、売れゆきさっぱりだった屋根空きグルマを紹介しよう。
文:ベストカーWeb編集部/写真:スバル、スズキ、ホンダ
■スバルヴィヴィオT-TOP、マルチトップの怪
富士重工業40周年を記念して、今まで見たこともないクルマを出そうと、前のめり(?)になってしまったのか、ヴィヴィオT-TOP。3000台限定で、画期的なマルチトップがウリだった。
マルチトップは、3分割のルーフと電動リアウインドウを組み合わせることで、クーペ、リアオープン、Tバールーフ、オープントップ、フルオープンの5つのスタイルに変形できるという、今まで見たこともない機構だった。
スバルの軽としては初のサッシュレスドアの3BOXのボディは、後席が用意され、4人乗り仕様となっていた。今、改めてみると、カッコいい! みなさんどう思いますか?
そもそもオープンカーは、街中ではかなり目立つ。コペンならばカッコいいとなるのだが、3BOXで屋根空き、しかも軽となると、正直こっぱずかしい、となったのではないだろうか……。
でも今だとちょっと違って見える。テンガロンハットを被り、ベストを着てウエスタンハッとを着た中年オヤジを電車の中で見ても、誰も変な目で見ない(少なくとも昔よりは)。そんな感じで、今ヴィヴィオT-TOPが走っているのを見ても、ちょい変なクルマというより、レアでいいかも、となるに違いない……。
ちなみに大手中古車情報サイトを見ると流通台数は7台。43万~119万円とやはりというか、そんなに高くなっていない。むしろ、いつ高値になるのか想像もつかない今の世の中、買って乗るのも悪くないかも……。
■スズキX-90 カッコいいとカッコ悪いの境目
1993年の東京モーターショーで注目を集め、「ぜひ市販して」という声に応えて、いざ発売したらサッパリ……という残念なクルマとして有名なのがスズキX-90である。
このクルマが珍車であるゆえんは、2シーターオープンスポーツと、クロカン4WDの融合だった点にある。
今ならこのクルマ、クロスオーバーSUVに分類されるだろうが、1995年当時は、まだクロスオーバーSUV自体が登場したばかりで(CR-VとRAV4はともに1995年10月の発売)、そういう呼び方があることも知られていなかった。
一方のX-90は、発売当初から極端な販売不振にあえぎ、わずか3年で絶版になったのだから、あまりにも対照的と言えば対照的である。
X-90のシャシーベースは、初代エスクード。つまり、本格クロカン4WD用のラダーフレームの上に、ユーノス ロードスターのボディを載せたような構造だった。
オープン機構は、ロースターのような幌のフルオープンではなく、デタッチャブルグラスルーフを持つTバールーフ構造。外したルーフ部は、ケースに入れてトランクに格納できるようになっていた。
日本でも北米でも、クロカン4WDとスポーツカーは、若者の人気を二分していた。そのふたつを融合したら、すごい化学反応が起きるかもしれない。いかにもスズキらしい挑戦的な発想である。
あ~、今発売していれば大ヒットしたかもという声はあるが、そうはならないのではないか。大手中古車情報サイトを検索してみると流通台数はたった5台(国内販売台数は1348台)、中古車価格は55万~260万円。
5台の車両本体価格の内訳は55万円、59万円、158万円、240万円、260万円と、後半の3台は極上車となっている。中古車市場でもそんなに人気がないからである。
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