世界的なドライバー不足も背景に? ブリヂストンのタイヤは自動運転トラックが運んでいた!?

世界的なドライバー不足も背景に? ブリヂストンのタイヤは自動運転トラックが運んでいた!?

 ブリヂストンは自動運転トラックのコディアックに出資しているが、米国の乗用車用タイヤの輸送に、既に同社の自動運転技術を活用している。輸送全体の最初と最後(ファーストマイル/ラストマイル)を人間が担い、中間(ミドルマイル)を自動運転が担うというモデルだ。

 北米最大手級の運送会社とのコラボにより帰り荷の確保も可能な、実践的かつ効率的な商用自動運転となっている。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Kodiak Robotics, Inc.

ブリヂストン・JBハント・コディアックの3社コラボ

世界的なドライバー不足も背景に? ブリヂストンのタイヤは自動運転トラックが運んでいた!?
コディアックの「第5世代」自動運転システムを搭載するケンワース「T680」トラック。LiDARやカメラなど搭載するセンサーは18基におよび、画像認識用のSoCが追加された。タイヤはブリヂストンのスマートセンシング技術を備える

 北米で最大級の輸送プロバイダーであるJBハントと、ブリヂストンの米国子会社であるブリヂストン・アメリカズ、そして自動運転トラックのコディアック・ロボティクスは2024年8月7日、3社コラボによる自動運転の長距離輸送トラックの走行距離が5万マイル(約8万km)を超えたと発表した。

 コディアックは2018年創業のスタートアップで、2021年にブリヂストンは同社に出資しており、その自動運転トラックにはブリヂストンのスマートセンシング技術も搭載されている。またコディアックの自動運転トラックに対してブリヂストンが独占的にタイヤを供給している。

 この自動運転輸送はブリヂストンの乗用車用タイヤをトレーラで運ぶもので、2024年1月の開始時から無事故かつ100%オンタイム(時間通り)での輸送に成功していることなどから、ルートや週当たりの輸送回数をさらに拡大したという。

 輸送モデルとしてコディアックの「ミドルマイル(ハブ間)自動運転」という実践的なモデルを採用している。

 これは、輸送拠点(ハブ)間の幹線輸送を自動運転トラックで行ない、ファーストマイル/ラストマイル輸送を人間のドライバーが担うというモデルだ。ジョージア州アトランタとテキサス州ダラスを結ぶ750マイル(約1200km。運転時間にしておよそ16時間)が「ハブ間」に相当する。

 自動運転を行なうハブ間輸送はコディアックが、集荷・配送などそれ以外の輸送はJBハントが担当する。1万4000台のトレーラを保有するJBハントのネットワークを活用、空荷を避けた効率的な運行を行なっており、いわゆる「コンセプト実証」とは一線を画している。

 なお、自動運転トラックの駆動軸にはブリヂストンの「M719」タイヤ、操舵軸には同「R213」を装着する。

帰り荷を含む「ラウンド・トリップ」自動運転の仕組みは?

世界的なドライバー不足も背景に? ブリヂストンのタイヤは自動運転トラックが運んでいた!?
ロードスミスは世界初の自動運転専門の運送会社を設立し、コディアックに800台分の自動運転システムを発注している。世界的なドライバー不足を背景に、自動運転トラックは巨大なマーケットに成長することが予想されている

 「ブリヂストンのタイヤ輸送に自動運転トラックを活用する」とは言っても、タイヤだけを運んでいては帰り荷を確保できない。片道が空荷であれば実証実験の域を出ず、実際の輸送では空荷で走る距離をできるだけ短くし、往復(ラウンド・トリップ)での効率化を図る必要がある。

 このため3社は、次のような仕組みを構築した。

・JBハントがグラニトビル(サウスカロライナ州)にあるブリヂストンのタイヤ工場から、ヴィラ・リカ(ジョージア州)にあるコディアックのハブ(アトランタ地区自動運転トラックポート)までタイヤを運ぶ

・アトランタからランカスター(テキサス州)のハブまでコディアックの自動運転トラックで移動する。この長距離ルートにはコディアックのセーフティ・ドライバー2名が同乗し、安全な運行を監視する

(米国ではトラックドライバーの労働時間が「1日14時間まで」とされており(日本は「原則13時間」)、16時間の距離をシームレスに運行するには2マン運行が必要。車両自体は24時間運行が可能だとしても、安全監視のための人間のドライバーがボトルネックとなる)

・ランカスターからブリヂストンのロアノーク配送センターまで約50マイルをJBハントが輸送する

・JBハントのプログラムを活用して、ルート沿いでライブ(トレーラへの荷物の積み込み)またはドロップ(積み込みを終えたトレーラ)の荷主を探す。帰り荷を積んだら、ダラス(テキサス州)からアトランタまでコディアックの自動運転トラックで移動

・アトランタから目的地までJBハントが荷物を輸送し、ラウンド・トリップが完了

 なお、各社は次のようにコメントしている。

 「コディアックやブリヂストンと緊密に連携することで、帰り荷問題を解決し、普段の日常業務に自動運転を取り入れた輸送を実現できました。これは、私たちのアプローチがお客様のニーズに合わせた効率的なソリューションを生み出すことができるという素晴らしい例です」。
(JBハントのCOO、ニック・ホッブス氏)

 「持続可能なモビリティソリューションで世界的なリーダーとなるため、ブリヂストンはコディアック及びJBハントと協力して、自動運転による長距離輸送が夢物語ではなく、今まさに実現可能であることを証明しました。ルートとパートナーシップを拡大し、将来のモビリティに投資できることをうれしく思っています」。
(ブリヂストン・アメリカズ副社長でロジスティクス&商品配送を担当するブラッド・ブリザード氏)

 「自動運転による配送プログラムを構築するにあたり、米国で最も尊敬される運送会社であるJBハントと、輸送技術のリーダーで弊社にも出資していただいているブリヂストンの両社は、まさに理想的なコラボ相手です。輸送全体の中間にあたる『ミドルマイル』を自動運転するというモデルの有効性を実証するとともに、業務効率を改善することで持続可能な成長への道が開けます」。
(コディアックの創業者でCEOのドン・バーネット氏)

【画像ギャラリー】大規模な商用展開も視野に? コディアックの自動運転トラック(5枚)画像ギャラリー

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