一般的に「トラックは鉄の塊」と認識されている。実際、この認識は正しく、ボルボの大型トラックは47%が鋼鉄でできている。サプライチェーンからのCO2排出を削減する上で、鉄の製造工程での排出量を減らすことが、トラックメーカーにとって重要となっている。
ボルボ・トラックスはこれまでEVトラックの一部に導入していた「低CO2スチール」を、2025年からディーゼル車を含む全ドライブラインに拡大し、鉄からの排出削減を本格化する。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Volvo Trucks
「低CO2スチール」をディーゼル車にも
スウェーデンのボルボ・トラックスは、製造時のCO2の排出量が従来より80%以上少ない低CO2スチール(鋼鉄)の利用を拡大する。この鋼鉄は、リサイクル素材と化石燃料フリーのエネルギーによって製造されるもので、2025年よりボルボのトラック数万台の製造に活用する。
ボルボは低CO2スチールを2022年からバッテリーEV(BEV)トラックの製造に活用している。こうした鋼鉄を製品に採用するのは、トラックメーカーとしては世界で初めての試みであった。来年からは主力のディーゼル車を含むすべてのドライブラインに拡大する。
採用するのはスウェーデンの鉄鋼メーカー・SSABが製造する「SSABゼロ」と呼ばれるもので、リサイクル素材と、化石燃料を使わない電気とバイオガスによって製造される。その結果、化石燃料を使用する従来の鋼鉄と比べてCO2の排出量は80%以上少なくなっている。
車両としては大型トラックの「ボルボFH」と「ボルボFM」に利用し、大型車の部品の中でも特に大きなレール(ハシゴ型フレームの左右にあるサイドレール)を低CO2スチールに置き換える。台数にすると年間でおよそ12000台という規模だ。
これによる温室効果ガスの削減効果は、CO2換算で6600トンに相当するといい、同社では低CO2スチールの供給量が増えれば、さらに多くのトラックモデルと部品に採用することにしているそうだ。
また、トラックに使われている鋼鉄以外の素材についても、より排出量の少ない代替素材に切り替えていく計画だ。ボルボ・トラックスのシニアVPでプロダクトマネジメント&品質管理を担当するヤン・ヘルムグレン氏はプレスリリースにおいて次のようにコメントしている。
「これはゼロ・エミッションという弊社のビジョンに向けた新しい一歩です。トラックの車体において鋼鉄は主要な素材です。さらに別の素材、例えばアルミやプラスチックなどもよりCO2排出の少ない素材への代替可能性を検討しています」。
トラックの半分はスチール
「自動車」という製品の中でも特にトラックは鋼鉄の使用量が多く、低CO2スチールによる排出量の低減幅も大きくなる。ボルボFHディーゼル車の場合、その47%が鋼鉄でできている。
同車の製造時のCO2排出量は全体で21トンとなるが、鋼鉄からの排出は、その44%に相当する(クレードルtoゲート=原材料調達から最終製品として出荷されるまでの排出量)。
このためボルボはグループとして複数のサプライヤと提携して、鋼鉄からの排出削減に取り組んでいる。従来から鉄のリサイクルには取り組んでいるが、パリ協定にコミットしているボルボは2040年までにサプライチェーンからのCO2排出ゼロ達成を目指しており、それだけでは充分ではない。
「弊社は環境フットプリントの低減に向けて絶え間なく努力しています。また、事業と製品(トラック)の双方において、循環型の経済を目指しています。工場やディーラー、配送など、多くのものが今日でも再生可能エネルギーで動いています」。(同氏)
ボルボによると、FHディーゼル車の47%が鋼鉄、26%が鋳鉄、11%がプラスチックなどのポリマー、8%がアルミニウムだ。合計すると9割を超え、車両の大部分がこの4つの素材で構成されている。それぞれがCO2排出の44%、26%、14%、8%に相当するそうだ。
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